告白スポットで


ざくざくと、地面を踏みしめる音が近づいてくる。
とっさにベンチの陰に隠れたが、かくれんぼで速攻見つかるような場所に隠れても、A級7位の目はごまかせない。

「あれ、みょうじじゃん。……何してんの?」
「……ひ、ひとりかくれんぼ」
「それシャレになんねーやつ。ほら、汚れんぞ」

米屋は何を考えているのかわからない笑みのまま、俺の腕をつかんで立たせた。
ベンチに誘導されるままに腰を下ろすと、おれを見下ろしながら米屋が前に立つ。

「んで、何? 聞いちゃったワケ?」
「ご、ごめん」
「いーっていーって。どうせアイツボーダーってだけで声かけてきただけだし。手当たり次第なんだとさ」
「へ、へえ」

知りたくなかった事実だが、それよりも、米屋が怖い。

こうして誰かの悪口をいう時は、恐ろしく、それはもう恐ろしく機嫌が悪い時だからだ。

「そんで?」
「え、」
「3年付き合った元恋人と話した気分は?」
「…………」

にこにこにこ。
しゃがんで下からのぞき込んでくる米屋。笑っているはずなのに、どうしてこうも怖く感じるのだろう。

何も言えずに黙っていたら、笑みを消した米屋が俺の腕をとる。強い力で握りしめられて痛くて、思わず声をあげた。

「痛いって、米屋、放せよ」
「なあ、お遊びって何? みょうじにとって、俺ってそんなヤツだったの?」
「ちょ、マジで痛いから、ねえって」
「答えろよ」

ベンチに押し付けられて、米屋の膝が胸に乗る。
苦しいわけではないけど、逃げられないのは悟った。無表情で迫る顔が怖い。
見下ろしてくる顔から目をそらしたら、いらだったように米屋の方を向かされた。

なんでそんなに怒られなきゃならないんだ、怒りたいのは俺だって一緒なのに。
思い切って黒い目を見返すと、米屋はわずかにたじろいだ。

「、だって、米屋全然、俺のほう見ないし」
「は?」
「ボーダー忙しいの知ってるよ、俺にばっかり構ってられなくなったのも。メール返ってこなくなったのも仕方ないって思ってる。けど、」

それでも。

「好きとか一度も言われたことなかったら、俺だって不安になるんだよ……」

邪魔になりたくない。そばにいたい。
そんな思いがずっと心の中にあって、天秤は前者に傾いた。

俺がそばにいたくても、米屋はどっちだかわからない。俺が好きだと言えば米屋は俺もだぜと軽く言うだけで、向こうから言ってきたことはない。

それに加えて多忙になり、話すことが少なくなって、耐えられなくて。

「邪魔したくないから別れたのに、なんなの、お前。遊びとか思ってたわけないだろ、ずっと後悔してんのに!」

最後はほぼ怒鳴っていた。米屋はそんな俺をじっと見ている。表情は変わらない。


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