□告白スポットで
テストも近いので、図書館で勉強していたら、すっかり遅くなってしまった。
慌てて帰り支度をして外に出ようとしたら、なんと雨が降っている。
「うわ、最悪……」
今日は雨降らないって言ってたくせに。天気予報め、嘘つきやがって。
仕方ないので、濡れて帰ることにした。傘なんてないし、購買はとっくに閉まってて傘を買えない。
幸い、雨量はそこまで多くないし、走れば平気だろう。
カバンを抱え込んで教科書が濡れないように庇い、雨が降る中に飛び込む。水たまりを踏みしめると、ばしゃんと水が跳ねてズボンをぬらした。雨のせいで髪が張り付いて気持ち悪かったけど、とりあえず走り続けた。
しかし、走っている途中で雨量が洒落にならなくなって、さすがにどこかで雨宿りをしてくことにした。
びちゃびちゃの体でどこかの店に入るのも気が引けたので、公園に逃げ込む。
奇しくも、米屋と別れ話をした公園だった。
樫の木の下にもぐりこんで、ようやく一息つく。常緑樹は葉っぱで水滴を受け止めて、俺にかかることはなかった。
空はまだまだ曇っていて、いつ雨があがることか。
「……何やってんだろ、俺」
ため息をついて、樫の木によりかかる。
もう一年が経とうとしているのに未だに米屋が忘れられないばかりか、忘れようとして勉強に没頭して、挙句が濡れ鼠で木の下に避難、なんて。
アホだ。先生に成績が悪すぎてガチで泣かれた米屋に輪をかけて。
寒さでくしゃみをすると、肩が震えた。風邪をひいたのかもしれない。情けない。
再び空を仰ぐ。先ほどよりも厚くなったような雲に眉が下がった。
「……別れようとか、言わなきゃよかった」
そんなことを言っても、もう遅いけど。
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