あかしがほしい


「先輩、」
「ああ、うん、ほら」

カバンの中の首輪を取り出して見せる。
今、見間違いだろうけど、佐鳥の目の中にハートが見えた、気がする。こいつどんだけ首輪欲しかったんだよ。

「人に着けるやつなら、そーいうお店のほうがいいかもとか思ったんだけどさ、さすがにハードル高かった。これ大型犬用」
「へーきです! むしろいい!」
「いいの?」
「うん!」

首輪を渡そうとしたら、佐鳥は手を出しかけてひっこめた。
俺がその行動に首を傾げていると、恥ずかしそうに自分の首を指さす。
つけてってことか。

ため息をついて、佐鳥に手招きした。ベッドに座っている俺の足元にぺたりと腰を下ろし、少しだけ頭を、持ち上げる。白い喉に目がいって、俺は唾をのみ込んだ。

「なんでまた、首輪が欲しいなんて」
「ず、ずっと欲しかったんだもん。だってなんか、その人のものって感じがすごくするから」
「ふうん」

赤い合皮を佐鳥の首に回して、喉仏の前できゅっとしめる。
指が2,3本入るくらいがちょうどいいらしい。店員のお姉さんに聞いた。

ぱっと手を離すと、佐鳥は興奮のためか小刻みに震えている手で、自分の首輪を触った。星をなぞったり、留め具をいじったり。どうやらお気に召したようだ。

人に首輪ってどうなのと思っている派の俺だが、なかなかどうして佐鳥に似合う。
「その人のものって感じがすごくする」、なあ。まあそれは微妙に賛成というかなんというか。

「佐鳥」
「はい?」
「これ」

カバンの中に入れていたもう一つの袋を投げる。佐鳥は不思議そうな顔をしながら袋を開け、目を見開いた。
しばらく固まっていたが、やがてゆっくりと唇に笑みを引く。

興奮を抑えきれてないお前の笑い方、俺は結構好きよ。

袋の中から取り出したるは、佐鳥の首輪と色違いで、星の飾りもない首輪。

「先輩、つけてもいい?」
「いいよ」

シャツの前をくつろげてやると、佐鳥は手早く俺に首輪を巻いた。

自分の首を触ってみると、つるりとした表面がある。
確かに、佐鳥のものという感じがするかもしれない。

「似合う?」
「すっごいコーフンする。先輩、これでおれのだね」
「は、今更」

お揃いの首輪を引っ張り合って、俺と佐鳥は目を閉じた。


名前変換なくて申し訳ないです。

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