□騒がしい廊下で
「お前、ボーダーA級のくせになんでこけたくらいで足くじくの?」
「うっせ、それとこれとは別なんだよ」
「どうだか」
そもそも高校生にもなって、階段何段が飛び降りられる最高かとか競うんじゃない。
ちなみに共犯の男子たち(米屋もまじってた)は、現在三輪が説教している。あいつの説教は長いので、先に負傷したらしい出水を保健室へ運ぶことにしたのだ。
結構勢いよくくじいたのか、歩くのが辛そうなので俺が背負って。
「おい出水ー、お姫様抱っこしてもらったほうがいいんじゃねーの?」
「ねーみょうじくん、それ写メとっていいー?」
「かっこよく映してくれ」
「やめろ了解すんなバカ! 見せもんじゃねーぞ、散れ!」
「お前自分がバカやったくせに……」
うるせーよと後ろから頭突かれる。それを見て、昼休みだからか廊下にたむろっている生徒たちが笑う。出水も恥ずかしいだろうが、その原因を負ぶっている俺の身にもなってほしいものだ。
と、ひとごみをかき分けて、俺達の方へ向かってくる人がいた。
正確には俺に、だけど。
「ねえ、委員長! こないだの話なんだけど……」
「ん、ああ。あれなら先生に話し通したから、終礼のときにでも出ると思うよ」
「助かるー! ほんとごめんね、ありがと!」
髪をダウンヘアにしたかわいらしい女子生徒は、出水を見て吹き出してから、元来た道をたどって行った。
背中の出水は不思議そうに俺に聞く。
「こないだの話って?」
「文化祭のだよ。今年の出し物について」
「ふうん。みょうじ本当面倒見いいよな」
「……普通だと思うけど」
「だって今こうして俺のこと運んでたり、ノート貸してくれたり、あとは保健室でさぼるとき庇ってくれたりさ」
「純粋にお前が迷惑かけすぎなんだけど」
わりーわりーと大して悪いとも思っていなさそうな声を聞きながら、ため息をつく。
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