付き合ってください


翌日の予定を見たら、俺が朝から防衛任務、三輪隊が夕方から任務だったので、俺は一旦家に帰り、米屋の教科書を手に再び本部へ戻った。
米屋たちが任務から帰ってくるまで、本部で待つつもりだった。

『みょうじくん』
「あ、月見さん。お疲れ様です」
『ええ、あなたもね。陽介くんたち、帰ってきたみたいよ』

久しぶりに地形踏破訓練やら隠密訓練やらをこなしながら待っていたら、あらかじめ話を通しておいた月見さんが、三輪隊の帰還を教えてくれた。
連絡にお礼を言ってから、急いで荷物を持って、直通通路近くまで急ぐ。

せかせかと歩いて通路まで向かっていると、やがて米屋の声が聞こえてきた。
三輪に話しかけているようで、彼らしい短い返答が合間に聞こえた。

「……からさあ、いい加減素直に言っちゃえばいいじゃん。アイツそこまで悪いヤツじゃねえよ?」
「うるさい、黙れ」
「あーあ、そんなこと言って。みょうじに愛想つかされても知らねーぞ?」
「…………」

俺は思わず立ち止まった。
息を殺して、米屋と、三輪の会話に耳を澄ます。

盗み聞きはマナー違反、と良心が小さく軋んだが、本能には勝てなかった。

「……陽介は、みょうじと仲がいいのか」
「ん? まぁ、悪くはねーよ。先週泊まりに行ってたし」
「…………そうか」
「あのなー。妬くくらいなら、素直になれって。みょうじの告白って結構マジだし」
「なっ……別に、妬いてるわけじゃない! ただ、みょうじが、いつもしつこいくせに、陽介とじゃれるから、」

そのあたりで、俺の喉からぐおぉ、という声にならない呻きが漏れた。

二人ぶんの足音が止まって、すぐさまこちらに走り寄ってくる。
そして、彼らから死角になっていた部分にしゃがみこんだ俺を発見した。

「あ、……な、なんで、お、お前がここに、」
「みょうじ? お前帰ったんじゃ?」

やっとの思いで米屋の教科書を差し出すと、米屋はああ、と納得したようにそれを受け取った。しかし、俺はそれどころではない。

頬が熱いわ心臓がどくどくとうるさいわ、まるで初めて告白した時のような気持ちである。

叫びそうな口を押えながら顔を上げると、俺を見下ろしていた三輪と目が合う。
いっそ可哀想になるくらいに、顔を真っ赤にして、ぷるぷると震えている三輪がいて、思わず笑ってしまった。

立ちあがって、固まった三輪の両手を取る。わずかに身長の低い三輪を見下ろしながら、今日何度目かの愛を告白した。

「三輪、好きだ。付き合ってくれ」
「……う、あ」
「安心しろ、絶対幸せにするから」

三輪はうつむいて、何事かを小声かつ早口でつぶやくと、俺を振り払って逃げてしまった。
あっという間に見えなくなった背中をそれでも見つめていたら、肩に米屋の腕がのる。
振り向くと、どこか疲れたような空気を漂わせる顔があった。

「秀次、任務の間中、おれのこと睨んでたんだぜ。めっちゃ妬いてたっぽいな」
「みたいだな。『裏切るなよ』って言ってたし」
「いや聞こえたのかよ! お前本当に秀次大好きな!」
「何をいまさら」

未だに熱のひかない顔のまま、俺は笑った。

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