付き合ってください


地面に降り立つと、片足を失った三輪が、鋭い目をこちらに向けた。
視線を交えただけで射殺されそうな気分を味わいながら、俺は万感の思いを乗せ、口を開く。

「三輪、好きだ。付き合ってくれ」
「くたばれ」

すぱん、と弧月で首を斬られて俺は緊急脱出した。
これで通算100回目達成だ。めでたくもない。



今日も三輪に告白して、今日もお断りされた。

出会ってからもうすぐ2年、恋に落ちてから1年。口先だけの告白は流されるようになってしまったので、今は模擬戦を申し込んでは告白している。
そうすれば否が応にも俺を見るから。

ブースから出てきた俺を待ち構えていたのか、米屋が片手をあげてねぎらってくれた。

「よう、みょうじ。今日も負けてたなー」
「すがすがしく首ちょんぱだった。上空から自分の体眺めるのって慣れないな」
「慣れなくていいんじゃね? フツーねえし」
「まあな」

違和感の残る首をさすっていたら、革靴の音を響かせながら三輪がこちらへ向かってきた。ああ、そういえば任務とか言ってたし、米屋を迎えに来たのか。

三輪はぎろりと俺を睨むと、短く「行くぞ」とだけ米屋に告げた。

「任務頑張れよ。その後俺と付き合ってくれ」
「……ハァ」
「ため息つかれてんぞ、みょうじ。悪化してね?」
「いや、ため息が色っぽいから無問題」

そう言うと、三輪は心の底から軽蔑したような表情を俺に向けてくる。
甘いな三輪、その程度でめげるようなら告白し続けるわけがないのに。

連れだって歩き出そうとした二人だったが、ふと米屋が俺の方を振り向いた。
つられるように、三輪も歩みを止め、俺を振り向く。

「みょうじ、そういやお前の家にさ、おれの教科書なかった? なんか公民のがねーんだわ」
「あー、あるある。落書きだらけだったから俺も付け足しといた」
「え、発見したなら持って来いし! 前宿題写しに行ったときか?」
「だと思う。気が向いたときに持ってくから期待しないで待ってろ」

親指を立てながら言うと、米屋はその指を思い切り逆方向に曲げやがった。

負けじと全力で親指をもとに戻すと、なぜか指相撲に発展した。
17歳の男子高校生が全力で指相撲、これは寒い。しかし負けられない戦いがここにある。

しばし二人でじゃれていたら、突然俺の手と米屋の手が、第三者の手によって引き離された。

米屋とそろってぽかんとしていたら、第三者、三輪が心底憎々し気に俺の方を向いた。

「……みょうじ」
「な、なんだ」
「しね」
「えっ!?」
「行くぞ、陽介」

ストレートすぎる暴言(しかも告白してないのに)を俺にたたきつけた三輪は、さっさとつかんでいた手を放し、今度は振り向きもせずに歩き去ってしまった。

「……な、なんでだ」

三輪は、案外口が悪いように思えて、意味のない罵倒はあまりしない。
毎回蔑んだ目で見てくるけど、罵倒するのは俺が告白して付き合ってくれと懇願した時だけだ。

今、告白してない、よな?

「……さすがに、やりすぎたかな?」

毎日一回は欠かさず告白しているから、そろそろMK5(マジでKILLする5秒前)なのだろうか。三輪ならあり得なくもないような気がする。

模擬戦では毎回殺されているのだし。

二日に一回程度なら、態度も緩和するだろうかと検討しながら、俺は対戦ブースを後にした。

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