校庭の真ん中で


菊地原がガンガン攻めてモールモッドやバムスターをばかすか斬っていき、俺は後ろで砲撃をはじいたり足を撃ち落としたりしてサポートに努めた。

残りはバムスター一体、となって、少しだけ油断した。
新たに開いた門から、モールモッドが俺めがけ突進してきたのだ。
バムスターとモールモッドに挟まれて一瞬固まった俺を助けたのは、意外なことに菊地原だった。

彼は自分の腕を一本犠牲にして、モールモッドの目を的確に両断した。
そこでようやくはっとして、急いで残りのバムスターを撃ち、蜂の巣にする。音を立てて崩れ落ちた近界民をしり目に、また門が開かないかを確認する。暗くなった空に異質な黒さは見受けられず、ようやく息を吐く。

「ごめん菊地原、助かった」
「ホントに最悪なんだけど。というか普通あそこで油断する? まだ相手いたのにさ」
「悪かったよ」

回収班に連絡して戦果を報告する。
その間菊地原は、動かない近界民を足で小突いて遊んでいた。きれいな校庭はトリオン兵の死体であふれている。
奉告を終え、年のわりに小柄な菊地原を見る。
飛ばされた腕以外は目立った傷もない。二の腕の半ばからすっぱりと切り落とされて、中の芯があらわになっているその姿は、なんというか。

「なんかエロい」
「……は?」
「ん?」

何言ってんだこいつと雄弁に語る顔をこちらに向け、菊地原は心から嫌そうにそんな声を発した。思ったことをすぐ口にしてしまうのは俺の悪い癖だ。
だけど、これは菊地原が悪い。

「ちょ、……何、」

つかつかと菊地原に寄って行って目の前に立つ。小柄な体躯を見下ろして、じっと戸惑ったような顔を見つめた。
不意打ちのように、スコーピオンで無事な方の腕も切り落とす。バムスターの上に落ちる腕を見て、菊地原はぽかんとしている。珍しい表情だ。

「菊地原」
「……だから何なの、勝手に腕切らないでよ」
「言えば切ってもいいの?」
「誰もそんなこと言ってないんだけど。頭おかしいんじゃないの、模擬戦でもないのに人の腕切るとか」
「……かもしれん。なんかその格好がエロく見えて仕方がない」
「はあ!?」

目を見開く菊地原の顔を両手で包み、小柄な彼にかがみこんでリップ音を立てながらキスした。
数秒して口を離したら、目を見開いたままの菊地原が俺を見上げていた。
……と。

『戦闘体活動限界、緊急脱出します』

「……おお」

菊地原の胸から突き出たスコーピオンが、俺の胸を刺し貫いていた。
ばきばきとひびが入る換装体。緊急脱出する直前に、ふとこぼしてしまった。

「なんかハートを貫かれたみたいだな」
「死ね!!」

いつもの心にくる毒舌ではなく、シンプルすぎる文句とともに俺は緊急脱出した。
直前に見えた菊地原の顔は、これ以上ないくらい真っ赤だった。

お題:確かに恋だった


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