ずっとずっと幼い頃から一緒にいた君。
気がつけば隣にいて、それが当たり前だった日常。

なまえのことを1番理解して、把握しているのはずっと俺だったんだ。



頭悪そうな顔して実は良いところ。
意外と頑固なところ。
何も考えてなさそうで色々考えてるところ。
可愛いものが好きなところ。

他の誰も知らないなまえのことを知っているのは俺だった。蓮二が知らないようなことも知っていたんだ。

俺にとっての1番は色んな意味で君だった。


「幸村!」

「…なまえ」


そういえば君はいつからか俺のことを精市と呼ばなくなった。あの頃はただ寂しかっただけだけど、今思えばあの頃から予想できることだったよね。

「何しょげた顔してんの?」

「秘密。それより彼氏の登場だよ?」

「え!?まじか!ありがとう!」

俺のことを心配してくれるのは嬉しいけど、やっぱり彼女の1番は俺じゃないことを思い知らされる。

一目散に走り出す彼女の目線の先には俺のチームメイト。


「っ蓮二くん!」

「なまえか。おはよう」


早いな、といいながら頭を軽く撫でる蓮二。それを心地よさそうに受け入れるなまえ。
付き合うことになったと聞いた時から覚悟はしていたけど、やっぱり慣れないね。

苦しくてたまらない。

でもそういえば蓮二となまえを取り持ったのは俺かもしれない。
だって蓮二が彼女に興味を持ち始めたのは俺の
言葉からだったんだから。


「ねえ聞いてよ蓮二」

「どうした?」

「なまえがいきなり、私はダイエットコーラなんていう邪道なものは認めない!とか言い出してさ」

「ほう」

「ペプシもダメだね!やっぱりコーラは甘くないと!とか自分のコーラ論について語ってくるんだよ」

「ほう。流されるままに生きているのかと思っていたが、案外自分の信念を持っているんだな。そういうのはいいと思うぞ」

「………」

まさか自分の言いたかったことを全て言われるとは思ってもいなかった。何よりもその時の蓮二の顔が忘れられない。あんな優しい顔は初めて見たんだ。

2人が付き合いだしたのはその三ヶ月後。
俺に入る隙なんてなかった。


彼女のことを1番理解して、把握しているのは俺のはずだった。
だけどそれはいつしか蓮二に変わって。

だから俺は大好きな2人を応援することに決めたんだ。2人が他の誰よりも幸せになれるように。








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