It won't change my mind.


信じられない言葉に思わず耳を疑った。…もしかしたら私の聞き間違いかもしれない。そう思って問いかけようとした矢先に、因みに聞き間違えちゃうからな、と釘を刺されてしまった。


『ごめん。ちょっと想像以上にびっくりしてる』


何か言わなくちゃと思ってなんとか発した言葉は、自分でも何の工夫もないな、と情けなくなってしまった。
それでも謙也は優しく微笑んだままで。


「俺の気持ちは今はいいねん。正直めっちゃ辛かったけどな!…で、聞いてくれるか?」

『そんなの言われたら聞くしかないじゃん』


少しだけ睨んでみたら、笑われてしまった。


「ありがとうな」



*


真琴が居らんくなってからの白石は本間に見てられへんくらい悲惨やってん。俺らテニス部がどんな言葉かけたってちっともアイツの心には響かんかった。
情けないけど俺らにはどうすることも出来んかったんや。


白石は文字通り来るもの拒まず去るもの追わず状態でな。もともとアイツモテるやん?しかも強敵真琴もおらんし、女の子はそらもう寄ってくるねん。
白石もなんとかして真琴の穴を埋めたかったんやと思う。本間に当たり構わず付き合っとった。でもな、あんだけ完璧完璧謳われてた白石がやで?


1ヶ月続いた女の子は誰一人居らんかった。


こう、傍から見てる分には白石に非があったとは思えんくて、それくらい完璧に彼氏を演じとったんやけどな。やから俺、聞いたんや。別れた女の子らに。


そしたら全員声合わせて言いおった。


元カノのこと忘れられへんくても、それでも良かったはずやねんけど、白石はちっとも私の事を見てくれへんかった。忘れるために利用してくれるならそれで良かったけど、白石は忘れる気さらさらないんよ。あれじゃあ流石に辛かってん。って。


白石も暫くしたら自分のやってることが虚しいって思い出したのか、ある時を境にきっぱり女の子との付き合いをたってんな。

それで、俺ら全員に言ったん。


俺はやっぱり真琴をどうやったって忘れることは出来ひんみたいや。何年かかってもいい。もう一度真琴に会えた時にカッコ悪い自分でいたない。やから、また頑張る。今まで迷惑かけて本間にすまんかった。って。


それからの白石は凄かったで!中学の頃とは比べもんにならんくらい何に対しても真剣やった。全部全部真琴、お前ともう一度向き合うためや。


正直なところ、今日白石に会ってカッコイイ思ったやろ。アイツの努力の成果やねん。

それくらいアイツは今も真琴が大好きで、ずっと後悔しとるんや。



*


一気に知らなかった事実が頭の中に入ってきて、キャパオーバーもいいとこだ。それくらい私にとってその話は衝撃だった。だって、私のことなんてどうでも良くなったとばかり思ってたから。


『…分かった』

「!それなら…」

『でも!無理なものは無理なんだよ』


今更そんな話を聞かされたところで、私の時間は戻ってこないし、正直どうしようもない。


「ヨリを戻せとは言わん。ただチャンスをあげてくれへんか?もしお前に少しでも白石を想う気持ちが残ってるんやったら」

『元々、白石と向き合うために大阪に来たの。だからそれには異論は無いけど、どうやっても戻ることはないと思う』

「真琴の気持ちは分かるけど、何でそんなに頑なに拒否してんの?あ、責めてる訳とちゃうで!でも彼氏居らんのやろ?」

『…彼氏は居ないけど、裏切りたくない大切な人はいるの。私にも色々あったんだから』


それだけ言うと謙也は意外にもそうやんな、とすんなり納得してくれて、その後は白石の話は全くでずに、思い出話をしながら盛り上がった。


謙也と別れた後、謙也のさっきの話がずっとぐるぐる頭の中を埋め尽くしていた。私をずっと想い続けて居てくれたことに、少なからず嬉しい気持ちを抱いたのと同時に、私にもまだ白石を想う気持ちは少し残ってることが分かって、ただ情けなかった。


どれだけ考えたって結論がつきそうにない頭をシャットアウトして、気を紛らわすために明日のことを考える。半ば無理やり押し付けられた約束だけど、破るのは失礼だし、きっと足を運ぶのだろう。



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