I can't understand what you said.
『、意味わかんない。馬鹿じゃないの』
「そうやな、馬鹿やと思うわ」
『わ、たしが!どんな思いで!』
過ごしてきたと思ってるのという言葉は、白石の顔を見てぐっと飲み込んだ。
な、んで?
なんでそんな悲しそうな顔をするの。
「真琴の言いたいことは、大体分かってるつもり」
『なら!』
「せやけど、どうしても俺は真琴が忘れられへんのや!」
『…………』
思うように言葉が出なかった。
何を今更勝手な事をって、散々罵ってやろうと思ったのに、
そんな顔するなんて、狡い。
*
私と白石が出会ったのは、中学一年の時。同じ委員会で、たまたま席が隣になって、初対面なのに話が凄く弾んだ。
関わりという関わりはそれくらいだったけど、同じクラスで仲が良かった謙也と白石が一緒の部活という繋がりで、何度も皆で遊んだりした。
多分その頃からだと思う。
私が、白石の事を好きっていうのを自覚したのは。
2年では同じクラスになって、またまた席が隣になって、あの時は本気で神様にお礼を言った。
そこからは早かった。
白石が私の事を好きだって言ってくれて、私たちは晴れて付き合うことになった。
私たちに倦怠期みたいなのはなくて、毎日が楽しくて、きらきらしてて、白石が愛しくてたまらなくて…。
だから、親から転勤の事を聞いたときも、私と白石ならきっと大丈夫だって。そう信じて疑わなかった。
だけど、現実はそう甘くはなくて
『ねえ蔵、話があるの』
「ん?なんや?」
『あのね、私転勤で神奈川に戻ることになったの』
「…………え?」
『でも!私たちなら離れたって大丈夫だよね!』
「…っごめん真琴。俺…無理や」
『………え?』
「こんなに愛しくて堪らん真琴が、俺の目の届かんとこ行ってまうなんて」
『え、くら…?』
「頭、おかしくなりそうやわ」
そう告げた白石の顔は今でも鮮明に覚えてる。自嘲気味で、ぞくりとするくらい綺麗な笑顔。
白石の事を怖いと思ったのは、あれが最初で最後だ。
『く、くら!?』
「…すまん」
ふらふらした足取りで私の前から消えていく白石に、何も言えなかった。
…白石とはそのまま。
私の転校は中学卒業後だったけど、白石と私が会話をしたことは、ただの一回もなくて、目さえ合わなかった。
勿論見送りに来てくれる筈はなく、私は神奈川に行って、連絡だってとれないし自然消滅というやつだ。
そう、自然消滅。
蔵への愛しくて堪らない気持ちは、ちっとも消えてはくれなかったのに。
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