You said "I still can't forget you".


 


友達と笑い合ってる白石は、昔と同じように爽やかで、だけど昔よりもずっとカッコよくて…。

正直、目を奪われた。

本当に情けないし悔しい。ちゃんと忘れたはずだから。今日は白石と最後に話す日だってずっと前から決めていたんだから。



「あ!真琴ー!こっちこっち!」

『!』


私を呼ぶ声に振り返ると、中学時代の仲良しグループがいた。その懐かしさにぐるぐる渦巻いていた余計な考えも消えてしまった。


『うわ!久しぶりー!』

「……………」



皆の所に駆け出すと寸前、違うテーブルの白石が私を見たような気がした。




*




「ほんまに久しぶりやな真琴!」

『だね!もう会いたかったよー』

「そんなん言ってー!こっちに全然帰ってこんかったのは誰ですか?」

『うわ意地悪。仕方ないじゃん、大阪と神奈川って結構離れてるんだよ?』

「しかもまた標準語になってるし!」

「ほんまに!せっかく矯正してやったのになー?」

『だって明らかに関東歴の方が長いし』


きゃいきゃいと童心に返ってガールズトークを楽しむ。私は中学から大阪に来て、高校で神奈川に引っ越し、大学も神奈川。今回は春休みを利用して、1週間だけ大阪にやって来た。


大阪に来る前は神奈川にいて、大阪にいた時間なんて中学3年間の凄く短い期間。だけど忘れられないのは白石と出会った場所だからだろう。


だって私は彼が――



「なあ真琴」

『…ん?』

「白石がめっちゃこっち見てんねんけど」

『ふーん。それで?』

「それで?って!あれ明らか真琴の事見てるやろ」

『勘違いだよ』


白石が私を見てる、ね。向こうも話すことがあるのかもしれない。けど、こんな同窓会の真っ只中で話す事じゃないでしょう。


「えーでも…あ、忍足」

『え?』

「ちょお真琴借りるな」

『は!?』


友人の言葉に振り返る前にぐいと腕を持ち上げられて立たされた。


『ちょっと何!』

「楽しく話してるとこ悪いんやけど、俺んとこのテーブル来て欲しいんや」

『は?なんで』

「実はな、白石が大分酔ってて…まあ酷いっていうか」

「謙也、その手離せや」


謙也の言葉に被せるようにして聞こえてきた声。
それは紛れもなく白石の声で。さっきまで向こうのテーブルにいた筈なのにいつの間に。


「し、白石!すまん」


白石の言葉にばっと手を離す謙也。相変わらずヘタレ過ぎやしないか。


「俺の真琴に触んな!真琴はずっと俺のや!」

『………は!?』


白石が叫んだと同時に辺りがざわつく。いやいやいや、何言ってるのこの人!


「ええかよく聞け?俺と真琴はな、」

『し、白石!ストップ!泥酔してるんだね!とりあえず付き合うから外行こ!』


皆に、白石を介抱してくると断って外に出る。い、いきなり何言い出すの!危なすぎる!


ここでいいかなとお店の外の路地に入って、とりあえず白石を地面に座らせる。


『おーい白石?落ち着いた?』


外は店の中とは別世界みたいに静かで澄んでいた。


「……やっと二人になれた」

『え…?』


大丈夫かなと屈んだ瞬間に、引き寄せられた。もちろん、目の前の白石に。


『きゃ!ちょ、離して!まだ酔ってるの!?』

「離さんし、もともと酔ってなんかない」

そんなミス俺がするわけないやろ、と言い放った白石に唖然とする。


『…騙したの?』

「人聞き悪いこと言わんといてや」


ただ真琴と話したかっただけや、と白石は言うけど、結局騙してるじゃないか。


『なに?手短にしてよ』

「はは、分かった。じゃあ話したいことはいっぱいあるけど、結論だけ言うわ」


私は白石から少し離れ、でも肩を掴まれたまま見つめ合う形になる。正直恥ずかしいけど、目をそらしたら負けな気がして、私も白石を見据える。



「俺ともう1度恋をしようや」

『………は?』



そんな彼が発した言葉は、私の頭をフリーズさせるのに十分だった。



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