My time began to move.
今日は特別な日だ。
いつもより気合いを入れてお化粧して、この日の為に下ろした服を着る。
全ては前に進むため。立ち止まってしまった時を動かすため。いつまでも心に残ったままの彼を、断ち切るため。
『…よし。大丈夫』
鏡の前で最終チェックを済ませ、お気に入りの靴を履いてドアを開けた。
*
「…真琴?」
集合場所に向かう途中に、少し早く見知った顔に出会った。ああ、懐かしいな。
『謙也じゃん。久しぶりだねー』
「久しぶりだねーちゃうわ!お前、今まで全く連絡せんかったやろ!」
『え、逆に連絡する意味が分からない』
「おまえな…まあええわ。お前らしい」
そう言って呆れながら笑う彼は、中学時代の同級生。見た目こそ大人っぽく、カッコよくなったけど、笑顔は昔のままで少しほっとした。
調子に乗るから絶対言わないけど。
『ごめんって。連絡しようとは思ったんだけど、ね』
謙也と連絡を取っていたら、あの人と繋がりを断つことができない。あの頃の私はそんなに強くなかったから。
「けど?」
『…めんどくさかった!』
「…ほんっまに変わらんな。変わったんは見た目だけか!」
『あはは、ちょっと安心でしょ?』
「むしろ友達いるんか心配やわ!」
『少なくとも謙也よりはいるよ』
「どういう意味や!」
あー、なんかこの感じ凄く懐かしい。
私が謙也をからかって、謙也が言い返して…あの人がそれを更にからかう。
「真琴も今から同窓会やんな?」
『そうだよ』
「じゃあ一緒に行こうや!」
『…えー、謙也と並びたくない』
「なんでやねん!おかしいやろ!」
『あはは、冗談冗談!行こっか』
ほんっまにお前はーと少し拗ねた謙也と目的地に向けて歩き出した。
*
しばらく歩くと、目的地の居酒屋さん。入口にはまたまた見知った顔。
『委員長ー!』
「え…?ああ!真琴に忍足!」
『うわー!久しぶり!委員長綺麗になったね!』
「ええ!褒めたって何もでーへんよ!それに真琴やって綺麗になった」
『まじか!照れる』
えへへと再開を喜んでいたら、後ろから冷たい視線。
『…なに謙也』
「お前、俺ん時と態度違いすぎるやろ」
『いや、だって謙也だし』
「…ああわかったわ!もうええ!」
「忍足拗ねんときって!女々しさに箔がつくでー」
「…お前も敵か!」
もう嫌やー!と泣きながら店の中に入っていく謙也と私の分の受付をしようと思って紙を見ると。
そこには全く変わらない綺麗な字体で彼の名前が記してあった。
『…………』
「?真琴どうかした?」
『へ?ああ、なんでもないよ!』
ごめんねと委員長に告げて、先に行った忍足を追いかけた。
入った瞬間、直ぐに見つけた。
カッコよさに更に磨きがかかって、中学の頃よりもずっと大人になった白石を。
心臓がどくんと脈を打った。
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