前線熱望一年生♀の育成に当てられた彩ちゃんが教育の結果その一年生が前線希望を取りやめ、あわや自主退学直前というところまで追いやっちゃって同期な上司に怒られちゃったときの言い訳話会話文。



―――――――――――


お前はプロバカンダ部隊を知っているか。

戦中、国民…今回の場合は軍内の意気を高めるために構成された言わばお飾りの部隊だ。外国様の話で言えば仏国の聖女…あれは本当に戦いに出てたようだが…あれと似たような物かな。見目華やかな若い女を選び、一つの部隊として仕立てあげるんだ。周囲の戦闘の意気を高める演出のために戦果を大々的に、時には誇張すら交えて発表する。
戦いの訓練もまともにされていない一年の女だ。だから死にやすい癖に、死ねば軍としての意気が下がるから実際には安全な場所にしか送られることは無かったよ。

無かったんだがな。

ある時その部隊が奇襲にあった。酷いものだったよ。まともな訓練も受けてない上に外との交流の印象を強くつけるために馴れない洋物の装備での応戦だ。圧倒的だった。ただの兵ではなくこちらは自軍の意気を高めるために構成された部隊だろう。それに見つかった相手が間の悪いことに黒軍本部の非学生強行派で構成された者たちでな。
ありとあらゆる辱しめを受けたよ。捕まった相手が悪かったな。殺されたものの扱いは特に惨たらしいものだった。
私は命辛々抜け出したが、今考えても、良くも死ななかったものだと思う。

何が言いたいか?
そもそも戦場に生半可な意識で女が参加するべきだとは思わないと言いたいのさ。



「……君は、もしかして、あの下級生に優しさを…」
「まさか。」

男の戸惑うようなその言葉に吐き捨てるように返し、女は顔にかかった髪を払った。艶やかな黒髪がぱっと広がる。

「お前なら知っていよう、女を入れた部隊は男の死亡率が跳ね上がるんだ。その弱さが足を引っ張るのではない。男の本能、言わば生来の騎士道精神とやらに似たプライドが、女の命を守らせるのだ」
「………」
「足を引っ張られるのは御免だと言いたいのさ。女だからと特別扱いされたくないと言いつつ、人前でクソも出来ない女が戦線なんかでやっていけるか。お前は知ってるだろう。部隊行動の場合、戦場では隙を見せぬように全員で武器を構えながら円を作って排泄行為に及ぶ。学生だからと甘くみている部隊が殆どらしいが、こと私のいるところでそんな基本的なことすらストレスになるような『か弱い』大和撫子様を率いさせるような無様な真似はしたくないからな。」

軍人様ごっこに興じたいだけの女だったと言うことだ、私のところに寄越したのが間違いだったな。

そこまで一息に続けた女は、実に挑発的ににやりと口の端を上げた。まだ言いたいことはあるか?と、そう言いたいらしい。
その笑みを向けられた男は、困ったように微笑みを浮かべた。

「……彩ちゃん。」
「ん?」
「……君は…国内の敵を、殲滅でもしてしまうつもりなのかな」

その予想外の言葉に、はっきりと目にわかる程度には女が動揺した。直ぐにいつもの不遜な態度を取り繕ってはいたが、一瞬確かに呆けた顔をしたのを彼は見逃さない。人を見るのが彼の仕事なのだ。

「…私は、一刻でも早く白軍の勝利でこの争いを収め、国内の力を蓄えるべきだと考えているだけだ」
「敵を全て滅ぼして?」
「………」

今度は隠す様子もなく苦々しく顔を歪める。頭の回転は早い方だ、彼女ももう彼の言いたいことは分かっているだろう。
それも重々承知の上で、敢えて言葉にするのはやはり少々痛い思いをしてもらいたいという考えがあるのだ。この女が同じことを繰り返すとは思えないが、しかし失敗の痛さは何よりも記憶に根を張る。

「君は確かに学生軍人としては誰よりも軍人らしいよ。でもね、彩ちゃん。この戦争は、相手を殲滅するのが目的ではなく、出来るだけ国内へのダメージを軽くして味方に引き込めれば引き込む、そう言ったことも要求されている。君のようなスタンスを全員が全員が取れれば確かに戦争には勝てるだろう。しかしその後は?」
「………」
「僕としてはね、あの子は目の前しか見えていない節があったから、彩ちゃんに多少なりとも柔軟性と言う奴を教えて貰えたらいいなとは思っていたんだ…全くもう、熱くなっちゃうと案外回りが見えなくなっちゃうのは昔から変わらないんだから」



――――――――――
かっこいいとこ取り〜〜な会話文風味。
忍鐘君お借りしました。
comment (0)




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -