日常5


「今日から雄英か〜…。」

雄英の門をくぐる。
私は今、綺麗で新しい制服を纏っている。
我ながら綺麗に着ている。
ネクタイをしめて、スカートの丈は膝上、
ブレザーもきちんとボタンを閉めてある。
足に傷があるので現在タイツなのが残念だが、
治ったら白の靴下を履く。
これは、似合ってる。
誰かに見せねば損だ!!
そうだ、緑谷に見せよう!!
そう思い、私はH組のドアを開けた。

「みどっ……」

辺りを見渡すと見知らぬ顔。
そういえば、学科が違った。
クラスが違うことを忘れていた。

「ど……どうも…はよーございます!!」
「……。」

少し恥ずかしいが挨拶をすれば、友だちができるらしい。
今、クラス全員に挨拶をした。
これで第一関門クリアだ!
私は自分の席を探し座った。
窓際の前から二列目か。
外の風景を楽しめる中々良い席である。
入学式とガイダンスが終わったら緑谷のクラスに行って感謝と自慢をしよう!
ヒーロー科だったっけ。

「入学式が始まるので、体育館に移動してください。」

どこからともなく、アナウンスが入った。
よし、体育館に落ち着いて移動しよう。

体育館に入ると椅子がたくさん置いてあった。
H組の座席に座り前を向いた。
さすが国立、体育館の規模も大きい。
天井がとても高い。
辺りを見回すがヒーロー科はいないらしい。
何かあるのかな。
突然あたりが静まり返った。
ねずみの根津校長が壇上に上がってきたのだ。
校長の話というのは総じて長いものだと思う。
私は校長の話を聞き流しつつ意識を飛ばした。

「お〜い…。」
「はっ……!」

いけない!
寝てしまっていた。

「大丈夫?」

この人は……クラスの人だ!

「もうすぐ入学式終わるよ。」
「あ、本当だ。ありがとう…。」
「長くて眠くなるよね〜」

こ、これがもしかしてと、友だち…!!
朝の挨拶の効果がもう聞いているのか…!!
先ほどの子に手を振り教室に戻った。
しまった、一緒に教室に戻ってこればよかったのではないだろうか。
まあ、次がある。

長かった入学式とガイダンスも終わり下校時刻となった。
確か、ヒーロー科はA組とB組だったはず。
どっちだろうか。
そういえば、緑谷と連絡先を交換していない。
困った。
A組とB組だし、どっちかに行けばいるか。
手始めに近い場所にあるB組から行こう。

「たのもー!」

私はB組の扉を開けた。

「え、道場破り?」
「誰?」
「知り合い?」
「いや、俺は知らない。」

見渡してみる限り緑谷はいないようだ。
A組だったか。

「B組に何か用事でもあった?」

サイドに髪を結んでいる女子生徒だ。
そうだ、挨拶をしておこう!

「こんにちは!」
「こ、こんにちは……。」
「友だちをさがしてて、」
「へぇ〜その子いる?」
「いない。クラスがちがったみたい。」
「探すの手伝おうか?」
「だいじょうぶ!親切にどうもです。失礼しました!」

私はB組の扉を閉めてA組の扉を目指した。
今の子も挨拶をしたから今度会う時は友だちだ!
楽しい気分のまま私はA組の扉を開けた。

「たのもー…あれ…?」

緑谷がいない…?
A組のクラスを見渡すが緑谷はいない。
ヒーロー科で、あっているはずだけどなぁ。
教室の中には数人の生徒がいるだけで緑谷は帰ったようだ。
…仕方がない、明日でいいか。
諦めて帰ろうとしたその時、

「おい、糞アマ。」
「……ばくごう、ヒーロー科だっけ。」

忘れていた。
爆豪もヒーロー科だったか。

「バリバリヒーロー科だわ、ボケェ!!」
「……静かに。」
「テメェもデクも…!!!クッソムカつく!!!!」
「……。」

今日も元気にうるさいなぁ…。
叫ばないでほしい。
私は耳に手を当てる。
爆豪が耳に当てている私の手を取った。

「そうだ、蛇女聞け。」
「なに?」
「お前は糞ナードの個性、知ってたのかよ?」
「個性?」
「お前は知ってたのかよ、」
「ん〜…そういえば、みどりやと個性のはなししたことないや。知らない。」
「…そうかよ。」

個性の話は個人的に都合が悪いからあまり話さないようにしている。
緑谷が一回も聞いてこなかったし、私も話さないしなぁ。
知らない、うん。
爆豪はなにか考え込んでいる。
個性について何かあったのだろうか。

「…ねえ、ばくごう。」
「なんだよ。」
「いつまで手、つないでるの?」

爆豪はハッとしたように私の手をはらう。
こいつ、自分で掴んどいてはらった…。

「お前彼女持ちかよ!!死ね!!」
「違うわ、ボケェ!!」
「ちがうよ。」

私が爆豪の彼女?
彼女というのは恋人である女性のことを指す。
恋人というのは親しいはず。
爆豪とそんな仲になった覚えはない。

「それ以前に、私とばくごうは友だちじゃないよ。」
「はぁ!?」
「ぶっは!」
「面と向かって言われてる、ふふ。」

教室内の所々から笑い声が聞こえる。

「おっ…お前。」
「え?違うでしょ?」

爆豪が見たこともないような顔をしている。
そうだ、似ているとしたら卒業式の時の二年生の…
告白を断った時の…傷ついた顔のような?

「なんでそんな顔してるの?
だってばくごう私のこときらいじゃん、ぜったい。」
「はぁ?俺がいつそんなこと言った?あ゛あ?」
「え〜…することなすことやめてって言ってもやめてくれないし。」
「……。」
「頭痛くなるから静かにしてほしいのに爆発するし。」
「…それで。」
「暴言吐きまくるし。」
「それはお前もだろ。」
「……。」
「…続けろ。」
「いやなことを続けるやつは相手のこときらっているって、
きらいなことをして距離をおくって、本に書いてあった。」
「……。」
「だから、ばくごうは私のこときらいだと……おも…ったんだけど……。」

爆豪の眉間にしわがよっていく。
いつも以上に凶悪な顔をしている。
怖いな〜…。
耳を塞ぐべきだろうか。

「耳を塞ぐなよ。」
「今からぜったい爆発するでしょ、やだ。」
「爆発しないから聞け。」
「…うん。」

爆発しないならいいか。
改まってなんの話だろう。

「俺は、お前のこと嫌いなんて言ったことはない。」
「そうだね。」

確かに聞いた覚えはない。
私は嫌いだと思っていたが、爆豪は私のことを嫌っていなかった。
となると、私の思い込みか。

「お前、俺、友達。わかったか?」
「私、ばくごう、友だち……?お前本当にばくごう?」
「はぁ?本物に決まってんだろ、吹っ飛ばすぞ。」
「……友だちってあれだよ、挨拶するんだよ?」

爆豪には挨拶をした覚えはない。
中学では緑谷しか挨拶を返してくれる人がいなかったしな。

「挨拶ぐらいできるわ。」
「……ばくごうが友だち、なんだかふしぎな気分。」
「片っ端から声かけて友達宣言してく変人のくせに。」
「変人じゃないし、やっぱりお前私のこときらいでしょ…。」

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4月*日

高校の入学式だった。
友だちがたくさんできるといいな。
きらわれていると思っていた人がいたが、
そんなことはなかったらしい。
驚いた。
次からは挨拶をしようと思う。


2017/04/17


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