日常8


※サポート科の授業を勝手に構造しています。


このあとから本格的に授業の始まりだ。
どんな授業なんだろうか。

「初めての実習の授業だから、
今日勉強したであろうシミュレーションを実際に行いたいと思う。」

午前中の授業で、シミュレーションの重要性についての話を聞いたが
午後の実習のためだったのか。
現実で試すことができない規模のものをデータで作り、
計算、現実的に可能か予測し事前に評価する。
また、クライアントと相談しより良いものを作るために重要だ、そうだ。
三人寄れば文殊の知恵って言うしなぁ。

「今からプリントを回す。
それに今回の授業手順が書いてあるから持っていくように。
最後に感想書いてもらって回収するから名前を忘れずにな。」

前の席のピンク髪の子から紙を回される。
A4サイズのコピー用紙だ。
名前を書かなければ。
私は筆箱の中からお気に入りの鉛筆を出す。
この鉛筆は転がして出た面の指示に従って
攻撃をしたり魔法を使ったりミスしたり、
という簡単なゲームに使われていた鉛筆だ。
ちなみに私のお気に入りキャラクターは王冠をかぶったメタル色のスライムだ。
小学校の頃人気があって買ったのはいいが、まだ誰とも対戦したことはない。
このスライムの鉛筆は何十本目の鉛筆だったかな…。
私はなんとなく鉛筆を転がした。
出た面は…ミス。
……気を取り直していこう。

「早くPCルームに移動しろよ〜」

施錠する生徒の声が聞こえた。
手早くプリントに名前を書き急いで筆箱に鉛筆をしまう。
先生はすでに教室を出たのか、残っている生徒は数人だけだった。
私は慌てて筆箱を持ち、教室から移動していくクラスメイトについていく。
先生の話を真面目に聞いていなかった私は、PCルームの場所がわからない。
ぞろぞろと廊下を歩いているこの列に混じればきっとPCルームに着くはず。
我ながら良い考えだ!
雄英のことだからきっとPCルームも規模が大きいんだろうな…。
クラスメイト達が一つの部屋に入っていく。
看板を見ると、PCルームと書かれていた。
やはり、私は間違っていなかった。


無事にPCルームに着くことができた。
座席は教室と同じで出席番号順のようだ。
私はピンク髪の子を探した。
彼女は後ろから二番目の席に座っていた。
つまり、私は一番後ろの席ということだ。
先生から離れている席は、自由があり競争率が高い席だ。
真面目に授業は聞いているがちょっと遊んでいてもいいという席は……
ちょっとそそられるものがある。
いや、遊びたいわけではないが。
私は少しの喜びを噛み締めつつ席に座った。

授業の内容は、簡単な経営シミュレーションができるソフトを使って生産、
販売、仕入れなどをクラスメイト同士で行うといったものだった。
ちなみに私の役割は車部品の工場で、素材の購入、製品を生産、業者に売りつけている。
簡単な経営シミュレーションの癖に、
生徒同士連絡ができるという高性能ソフトのせいで
業者役の人が毎回値切りに来る、却下。
「あなたの商品もう買いません、他で買います。」って連絡が来るが、気にしない。
御宅の車が完成しないだけだ。
売れなくて困るのはお互い様だからな。
他で是非買ってくれ、値切りにも限度はあるからな。
と一連の作業を繰り返している。
……これは、経営科の授業じゃないのか?

「経営科の授業だと思う人いるだろう?」

思った!!
生徒の声で埋もれている部屋に先生が聞こえた。
生徒達は先生が喋るということが伝わったのか途端に静かになる。
先生は一呼吸置いてから喋り出した。

「その通りだ。
しかし、この授業を行ったのには理由がある。
経営科は実践的に経済の流れを学ぶ、
ヒーロー科は…シビアだしきっと肌で感じるだろうし、
普通科はちょっとわかんないけど
……その辺は普通科の人に聞いてきて。

えっと何が言いたいかって、
サポート科だからと言って現代で経済の流れ方がわからないのは致命傷だ。
それを簡単にわかりやすく知ってもらうにはゲームをしてやってみることだと考えた。
俺達、教師はサポート科にも必要な知識だと判断したから、初めての授業で経営シミュレーションをしてもらった。

いつの日かの将来君達も社会に出たらこの経済の流れの中に身を投じることになる。
それを自覚しながら、君達に雄英で有意義な時間を過ごしてほしい。
あー……話は以上です、あと配ったプリントは前に向きを揃えて提出すること。
授業終了までそのままシミュレーションを続けてください。」

先生は気まずそうな顔をしている。
難しい話が苦手な人なのだろうか。
先生が喋るのをやめたことで部屋にまた生徒達は喋り出した。
さっさとプリントに感想を書いてしまおう。
そう思い、筆箱から鉛筆を出した。

『授業の最初はなぜ経営シミュレーションをしているのか不思議でしたが、
先生の話を聞いてどうしてこのような授業が設けられたのか納得しました。
話を聞き、より多くの教養が必要だと感じたのでこれからも勉学に励もうと思います。
今週からの授業が楽しみです。』

感想って…こんな感じでいいかな。
当たり障りのない文脈だが、まあいいかな。
嘘は書いてないし。

一通り感想を書き終えたのでPC画面を見る。
我が社の経営状況の確認、可もなく不可もなくといった状態だな。
慌てず現状維持で行こう。
あ、また値切り交渉きた。
懲りないなぁ……。
却下だ!
業者役の人にお断りと返事をし、暇になった。

しかし、本当に雄英は規模が大きいなぁ。
そっと周りの邪魔にならないよう部屋を見渡す。
パソコンのスペックも必要なソフトウェアも最新バージョン。
今インストールされていないソフトウェアも教師達の厳正な審議の結果、
必要だと判断された場合買い足してくれるそうだ。
あと、一人一台タブレットも配備されているらしい。

ただ、タブレットは使いづらいとのことで
普段の授業はあまり使わないとのことだ。
なんで、買ったのだろうか。
一通り見たがさすが雄英と言うべきなのか、金がかかっている……。

そういえばピンク髪の子は何の役割をしているのだろうか。
気になってちらっと見ると暇そうにしていた。
PC画面を見るとサラリーマンとなっていた。
せっかく席も近いし話しかけてみようか…?

「あの、何かご用ですか?」
「へっ」

は、話しかけられた!挨拶しないと!

「こんにちは!」
「はぁ…?」
「暇そうだったから喋っていいかな…って」

話したらだめだったのかな…?

「そうなんですよ!暇です!!私工場とかが良かったのにサラリーマンだったんですよ!!」
「サラリーマンも働かないの?」
「一応働いていますけど、…個人的には溶接とかアイテム開発の実習やりたいですよね。」
「わかる。」
「ですよね!!あ、私は発目明といいます!!」
「はつめ、よし覚えた。私は蛇尾一です。」

発目はどうやらエネルギッシュな人みたいだ。

「そうですか!そう、私には溶接と言わず作りたいものがあるんですよ!」
「へぇ〜…」
「好きなヒーローの装備を改良して開発したいんです!!」
「すごいなぁ!私はあれだなぁ…作りたいものが具体的に浮かばないけど
物質についてなら強いから応用して何かしたいな、と思ってるかな。」
「ほう…?」
「鉄の性質だったりとか…なんだろ物質系の性質とかなら得意だから改良の役に立てると思うよ。」
「ほうほう!!いいですね!!
あ、聞きました?放課後にアイテム開発のために居残っていいっていう話!!」
「え!知らなかった!」

もしかして、鉛筆で遊んでた時に話してたのかな…?

「どうです?せっかくですし一緒にこの後工房行きません?」
「い……行く!!」

これが噂に聞く授業後に遊ぶというやつか!!
高校生ライフってすごい!!
そのあと発目と一緒に、パワーローダー先生から工房の使い方を聞いて個人で作業をした。
発目は早速設計図を作っていた。
私はまだ何も思い浮かばないので工房で何ができるか確認した。
発目に素材についての話を聞かれたり、この素材だったら部品がどうなるか考察したり素材トークを楽しんだ。
そのうち私も作りたいものを具現化できるように頑張ろうと思った。

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4月△日

友だちの友だちたちとご飯を食べた。
ついに友だちと連絡先を交換することに成功した。
下の名前で呼んでもらった、うれしい。
席が近い子と喋った。
おもしろい人だった。
さっそく、この後にメールを送ろうと思う。


2017/05/06


BacKGO

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テーマ「人外ファンタジー」
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