日常7


「こんにちは!」
「こんにちは……早いね…。」
「そうかな?」

昼休みだからA組に遊びにきた!!
あと、一緒にご飯を食べるんだ。
授業が終わった直後だからまだ人がいっぱいいるな。
ぐったりしている人が多い、やっぱりヒーロー科はハードなのかな。
緑谷も心なしか疲れているようだ。
よし、友だちである私に任せよ!

「な〜みどりや!いっしょにご飯食べよ?
ご飯を食べたらだいたい元気になれる!」
「え、ああ…麗日さんと飯田くんもいるけどいい?」
「ぜんぜんお〜け〜」

女の子と男の子だ。
緑谷友だちなのだろうか?
友だちの友だちは友だちだったはず?
ならば、断る道理もない!!
そして、私とも友だち!!

「麗日さんと飯田くんもいいかな?」
「いいよ!」
「あぁ、いいとも!是非、サポート科の話を聞かせてくれ!」
「しょうち、お任せあれ!!」

私は親指をぐっと立てる。
と言ってもまだ授業で物を作ってないから、
ガイダンスの話しかできないけどね!
あ、でもヒーロー科は入学式いなかったっけ。
入学式の話でもしようかな…。

「なぜ武士風…」
「ん?あぁ、きのうね、時代劇見たんだ!!」
「この前はファンタジー物の映画見てなかった?」
「見てたね、メガネのまほうつかいのやつ。
こんかい見たのは水戸のご老公のやつだよ。」
「あ〜有名なあれ。」
「そう、有名なあれ。」

雑談を交えつつ廊下を四人で並んで食堂まで歩く。
映画のおはなしながら、いっしょにご飯を食べる…。
なんて幸先のいい高校生ライフだ。


そんなことを思っていたら食堂についたみたいだ。
お昼時だけあって人が多い。
座る席も少なそうだ。

「僕達はLUNCH RUSHのところでご飯買ってくるけど…蛇尾さんお弁当?」
「うむ、そのへんに座って待ってる。」
「すぐ戻ってくるから…」
「気にしなくていい。」

食堂の列に並びに行った三人を見送る。


さて、席を探すか。
早く席を取っておかないと座れなくなりそうだ。
お、窓際にちょうどよく空いている席がある。
私は席に座った。
自分の席はともかく残り三席…
どうやって場所を取っていると主張できるか…。
周りを見てみる。

他の座席には荷物が置いてあったり、ブレザーが置いてあったりする無人席がある。
…不用心じゃないか?
ふむ、不用心だが要は自分の物を空き席に置いておけばいいんだな。
とりあえず自分の横の席に私の弁当箱を置いた。
机を挟んで向かいの二席はどうしようか。
もう私の持ち物はないぞ…。
だとするとブレザーか?
でも、ブレザーだとあと一席取ることができない。

はっ…私の尻尾なら二席同時にとっておくことができるのではないだろうか。
これだ、これならいけるぞ。
尻尾だけなら個性全てがバレるわけでもない。
全てがバレると都合が悪いが…。
これなら私の個性は尻尾を出すだけ、と印象付けられるはずだ。
緑谷にもついでに主張しておこう。

よし、尻尾だな。
私はスカートの端を持ち上げる。
尾てい骨から皮膚が伸びていく感覚がする。
私の履いているスカートが長めなのは
尻尾を出した時に下着が見えないようにするためだ。
つまり、今のような状況のためである。


この尻尾を生やしているというわけではない。
私の尻尾は元から生えていたのだ。
しかし、座る時や服を着る時邪魔でしかなかったので
尻尾の骨を骨盤や背骨などの他の骨の強化に回し、
尻尾の分伸びていた皮膚は周りの皮膚になじませる。
そうすることで尻尾の存在をなかったことにした。


余分な骨と皮膚を他の部位に分けて、
見た目に反映させないことに成功した、というだけだ。


きっとこれを応用すれば、尻尾の余分な肉と骨の分だけ
腕の本数を増やしたり足を増やしたりことだってできるだろう。
骨を一時的に修復することは試したことがある。
そちらは成功したが、物理的に四肢の本数を増やすのは
本末転倒になるので試したことはない。
いずれ機会があったらやってみるのもいいかもしれない。


…少し脱線したが、何を主張したいのかというと
表現としては尻尾を生やすというより尻尾を戻す。という方が正しいのだ。
どちらでもいいのだけれど。

まあ、尻尾がない程で服を作っているので
尻尾を出すたびに少し下着をズラすことになる手間が増える。
違和感があるが仕方ない。
オーダーメイドで穴の空いている物を注文するにも予算があるからな…。
スカートを長くしてくれという注文は、
サイズが大きめのスカートを頼むだけなので財布にも優しいのだ。
そんなことを一人悶々と考えているうちに尻尾が完全に出ていた。

おっと、早く向かいの席に尻尾を置いて席を取らねば。
座席の上にそっと尻尾を乗っけた。
これで、座席を取ることができたはずだ。


あとは緑谷に連絡……

「あ、連絡先交換するの忘れてた…。」

この前教室にお邪魔したときに交換しようと思っていたんだった。
その時は教室に緑谷がいなくて交換できなかったんだ。
どうしようか。
今更緑谷たちのところに行って説明すると席無くなるだろうし…。
でも気づかなかったらご飯食べずじまいでお昼が終わっちゃいそう…。

困った。
ふと足元を見ると紫色の丸い物体がいた。
なんだこれ。

「なぁ……お前、爆豪の友達の女だよな?」
「喋った……
ばくごうに女の友だちがどのくらいいるか知らないけどそうだね。」
「今朝A組来てた…」
「来てたね。」
「……おっぱい。」


「………誰。」
「オイラは峰田。」
「そっか…私はおっぱいじゃないよ。
サポート科の蛇尾です。」
「今尻尾が……」
「生えてるね。」
「尻尾が生える………エロい。」
「……??」
「なぁ!一緒に飯食べようぜ!」
「みどりやたちと食べるからだめ。」
「くそぉ!!この美人が!!!うわあああ!!世界は不平等だああ!!」

そう叫ぶと紫色の物体もとい峰田は走り去った。
……なんでだろう。
一応手を振っておこう。

「蛇尾さん…今峰田くんが走ってったけど何かあった?」
「いや…?何も…?」

今の叫び声に気づいたのか、
緑谷が私の座っている場所に気づいてくれたようだ。

「あ、席とっといてくれたん?ありがと〜!!」
「いえいえ〜」
「む?これは尻尾か?」
「うん、私の尻尾。」
「そういえば、かっちゃんが蛇女って言ってた……はっごめん!!」
「??別に蛇の尻尾だし間違ってないよ?」
「いや……蔑称なのかと思って。」
「わかりやすくてよくない?」
「蛇尾さんがそれでいいならまぁ…」
「苗字も蛇の尾だしね!」
「それもそっか。」

ぎゅる〜……
あ、お腹鳴った。

「ご飯食べよ?」
「そ、そうだね!」

…緑谷達のトレーに乗っているご飯おいしそうだ。
光り輝く白米がある…
白米…米…そういえばここしばらくパンしか食べてないな…。

「あれ、蛇尾さんまた…サンドイッチ?」
「うん。」
「他の食べたいって言ってなかった…?」
「値段わかんなかったから今日はお弁当なの…お値段どうだった?」
「あ〜一人暮らし?」
「うん。」
「私もだけど、値段気になるよね〜」
「ね〜」
「いい感じだったよ!!」
「明日から私もそっちにしようかなぁ…」
「いいと思うよ〜」

優しい…!!

「あ、そうだ。みどりや。」
「な、なに?」
「連絡先交換しよう?だめ?」
「だ!だめじゃないよ!」
「やった〜」

「そういえば交換してなかったね。」
「うん、忘れてた。」
「あ、じゃあうちもいい?」
「い、いいの?」
「む、では僕も。」
「…や、やった。」

嬉しい誤算だ。
友だちが、友だちがいっぱい!

「あ、私は麗日お茶子!よろしくね!」
「僕は飯田天哉だ。よろしく頼む!」
「私は蛇尾一です。よ…よろしくお願いします!」
「はい、蛇尾さん。これ僕の連絡先。」

私の携帯電話に緑谷の連絡先が登録されている。
はっ…初めての友だちの連絡先!!
先生と警察以外の連絡先だ!!
う、嬉しい!!!!

「はじめちゃん、すごい目が輝いてるね…。
あ、はじめちゃんって呼んでいい?」
「い、いいよ!」

はじめちゃん……!!!なんて可愛い響きなんだ!!!
いや、私の名前というより女の子に名前を呼んでもらうこの感覚!!
熱い!!

「顔赤いよ?大丈夫?」
「だいじょうぶ…。」

はわぁ〜……おんなのこすごい。
私は慌ててサンドイッチを口にねじ込んだ。
ゆで卵をマヨネーズで和えたものを挟んでいるはずだが味がしない。
たまご、どこいったんだ。
私は席を立った。

「わ!!私食べ終わったから教室帰るね!!!」
「え!まだ口モゴモゴしてるよ?」
「なんかあったら連絡してね!!ばいばい!!」

私は口に残っているパンを飲みこんで走った。
ついに友だちと連絡先を交換した!
ど、どうしよう!嬉しい!!!わあ〜!!!

なんてメールしようかな!
そしたら、授業の内容でも送ろう!!
俄然授業が楽しみになって来た。
早く教室に戻って、用意をしよう!
私は全力で教室まで走った。


2017/04/23


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