リベアム | ナノ
R) 泡沫の守護者



リヤンの過去。暗いよ。死ねた注意。



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「…主、様が……?」
 戦の最前線にいるはずの兵隊が戦の後方、国王を守る陣地に駆け込み、叫びながら知らせたのは将軍の戦死。その声は陣地の更に後ろ側にある天蓋の中で待機していた青年の耳にも届いた。
「え…あ、ギャルド、様。」
「主様が、本当に…?」
 白磁の肌を更に青白くさせながらふらりと青年が陣地に入ってくる。その様子は戦争中のこの地では余りに儚げだ。
「は、い…首を、とられて…」
「首……あ…あるじ、様ぁああっ!!」
 青年がそのピンク色の目をゆっくりと国王の前に置かれたものに移動させると、今朝戦前に見送った青年の主の頭が黒い布に包まれて台の上に鎮座されているのが映る。幼い頃から部下として仕えていたその者は、普段優しげに笑いかけてくれていた顔を厳しく硬直させて、べっとりと赤黒い血を顔中に付着させていた。
 ギャルドと呼ばれた青年は目の前にいた兵士を押しのけ、国王の前だということも忘れて仕える者のもとに駆け寄る。その両腕で守るべきものの頭を、自身に血がつくのも構わず抱きしめながらくすんだ金の髪に顔を埋めてがくりと地に崩れた。細い肩はがたがたと震えていて、傍目も余りに痛々いその姿に口をつぐんでいた兵隊たちがそっと目を伏せていた。
「…ギャルド、お前の防御魔法機はどうなっている。」
「……。」
「ギャルド!!」
「あ…えっと…僕、否、私の、魔法機は、1機は破壊、2.、3機はまだ作動。魔力が満ちた今、この陣地内なら全く問題は、ございません。」
 放心していた思考を、国王の叱咤の声で取り戻した青年は、震える声で、しかし、しっかりとした意識を持って問いかけに答える。【戦はまだ、終わっていない】ことをこの身でしっかりと感じ取っているのだ。
「お前の主が守ろうとしたもの。守り抜いてみよ、リヤン・ドゥ・ギャルド。」
「……かしこまりました。」
 青年ははっきりと答えながら一度だけ唇を噛み締めて、そのままゆっくりと立ち上がる。両の腕で己の主を大事に大事に抱きしめながらゆっくりと厳つい将軍たちの前に進み出て、口を開いた。
「全軍、がむしゃらに戦うよう見せかけながら中央を開き、本陣に敵を誘ってください。万が一にも本陣に矢、一つ入らせません。」
 鮮やかなピンク色の目をゆっくりと開いて勤めて冷静に、静かに言葉を続ける。
「敵の中央隊までが全て本陣に向いたら、一気に叩きます。」



「長い間、お世話になりました。」
「本当に帰郷するのか。」
 ほどなくして、戦争を終えた国から桃色の髪をした青年が国境の門を潜ろうとしていた。その見送りに国王と、数名の厳つい貴族が並んでいる。
「はい。私の主はもうご家族のもとに居られます。私が主のためにできることはもうありませんので、これでお暇させていただきます。」
 あの時見せた冷静で冷淡な雰囲気は夢のように消えてしまったように、青年は柔らかくにこりとほほえんだ。
 丁寧に深々と見送りの者に頭を下げると、待たせていた馬車に乗り込む。
 ゆっくりと走り出した馬車の窓から風を受けながらリヤンは主に残された赤い胸の宝石を無意識にその指先が撫でる。



Rien・de・Garde
  泡のように儚い守護者は長い長い時を共にした 一人目の主を見送り
  光に憧れる泡沫のように 愛ある国へと その道のりをゆっくりと進んだ。




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前の主とはこんな感じでした。
前の主様はご年配の猛者将軍。妻有子供有り。
リヤンが仕えたのは彼が8つの頃。おじいちゃんみたいな。

リヤンは帰ってから数ヶ月、家にひきこもりましたが、今は全然普通の少し気弱な青年です。


こんな奴ですが、よろしくお願いします。

ご閲覧ありがとうございました!!





みそ







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