「ねぇ、今日ってどこ行くんだっけ?」
「ここだ」

一方通行がタッチパネル式ケータイを差し出すと横から御坂が、後ろから麦野が覗き見る。座席を決めるときに少々のいざこざがあったのだが、それは語るまい。
3Dの画面には、赤い印が浮き上がって見えた。十字架のマーク。御坂達の大学が科学学部を専門にしているのに対して、今から向かう大学は魔術系統の学部を集めていて、互いに紛争が起こらぬよう、年に何度か各大学の代表者が集まって会議を開いているらしい。
御坂は今回が初めての参加だった。正式な服装を、ということで食蜂に合わせてもらったスーツは動きづらい。

「どんな人達なの?相手の代表者は」
「そりゃもう理解不能な奴らばっかりだ」
「理解不能?」
「ああ、毎日御本ばっかり読んでやがる。あ、そういや――」

垣根が有名洋菓子店のチョコレートを取り出したので、麦野と食蜂を含めた三人は魔術側についての会話から抜けた。仕方なく御坂は残った一方通行に続きを尋ねる。

「御本っつーのは聖書のことだ。エラい神様の教えが書いてあるンだと」
「神様……」
「まァ、この会議も表向きは振興を深めるってことだが、実際は腹の探り合いっつーこった。スパイを放って思想弾圧してねェかとか、ちょっとした綻びを狙って潰そうとしてやがる。そォすりゃコッチを潰す正当な理由が作れンだからなァ」

心底興味の無さそうに彼は読んでいた英字新聞を脇に放った。第一面には『Magical』の文字が並んでいる。某大学のトップが変更されたらしく、どこかヌケた少年の写真が載っていた。

「……ふぅん。どうでもいい気がするけど」
「それにゃ同意するわ」
「俺もだ。そういう汚いやり方は卑怯者がするやり方だからな」

珍しく溜め息を吐いて、削板は座席のシートに身を沈めた。

「それより弁当だ!」
「珍しく殊勝な発言したと思ったらそれ?しかもみんな弁当開け始めてるし」

さっきチョコレート食べてたじゃない、とツッコミながらも空腹ではあったので彼女もそれに倣う。

「お、御坂の弁当手作りか?」
「いちおーね。っていうかコンビニ率高っ!!」
「「そうか?」」
「食蜂以外みんな弁当じゃない!一方通行に至ってはチキンオンリーって何!?野菜も採れ!」
「野菜なンて食うもンじゃねェよ。それとも何か?次からは美琴ちゃンが作って来てくれるっつーことなンですかァ?」
「えっ」

御坂がそれってつまりそういう、とあたふたし始めたとき、第一位と二位&四位がアイコンタクトで激しい火花を散らしていた。軍配の上がりそうな一方通行は得意げに鼻で笑う。

((図りやがったな、この下衆野郎が))
(そォやって鈍臭ェから万年下位なンだよ)

天気は曇り。御坂達を乗せた列車は確実に目的地に近付いていた。



臆病者のチキン




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120205
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