02 | ナノ





「一方通行ぁ!」

何だあの図は。昨日まで御坂と一方通行の間には、恐ろしく冷えた空気が漂っていてそれを取り持つのが俺の仕事の一つであった筈だ。なのに。

「美琴か」
「ほら眼鏡買ってきたの。かけてかけて!あ、ちなみにダテだから」
「しょうがねェな」

あの一方通行が、俺たちがいくら話し掛けようとドライな関係しか持とうとしないあいつが、一人の後輩には心を開いたらしい。やあおめでたいおめでたい…じゃねえよ。抜け駆けのつもりなのか、第一位は。
御坂は、レベル5の「みんな」の可愛い後輩である。何だかんだ言ってもみんなが、あの子に好意を持っている。歪んだ性格のせいで分かりづらいけれど。

「似合う似合う!ね、私もおそろいー!どぉ?」
「馬子にも衣装ってとこかァ?」
「なにそれどういうことよ!」
「嘘だっての。よく似合ってる」
「えへへ」

甘い。このままだと体内の糖分摂取量が規定値超えて糖尿病にでもなる。いや勿論、一方通行はどちらかというと(さも愛おしそうに髪を撫でているが)兄として妹を可愛がる、という態度が近いし、御坂も今まであの性格と立ち位置から甘えられる者がいなくて漸くそれに値する者に出逢えた、というところだろう。だからカップルではないだろうが、除け者にされているようで面白くない。

「御坂ー、これから出ねぇか?お前この辺知らないだろ?案内してやるよ」
「うーん…じゃあ行こうかな」

そう、一方通行になくて俺にあるもの。それは対人能力だ。ざまあみろ、と御坂の見えないところで笑ってやると、凄い形相で睨まれた。

「……俺も行く」
「は?」
「このエロメルヘンが何するかわかンねェからなァ。監視だ監視」
「人聞き悪ぃな、一方通行。お前こそ俺がいなかったら、御坂喰ってたんじゃねえの?」
「ハッ、そりゃァ寝言かァ?そっくりそのまま反射してやるよホスト紛いの女たらしが」
「行きずりの女捕まえて慰めてそうなやつに言われたくねぇな」
「あァ!?もォ一回言ってみろォ!!」

俺は演算開始、一方通行は立ち上がってチョーカーに手をかける。さあ戦争の始まりだ、というところで電磁波が飛んできた。

「何やってんのよあんたら!もう、早く行くわよ」
「あ、ああ……」

御坂は相変わらず一方通行と楽しそうに話している。あいつが居ればそれでいいんじゃないか。これじゃあ俺は惨め過ぎる。

「垣根!」
「え?」
「何ぼーっとしてんのよ。あんたが誘ったんでしょ!下手な案内したら許さないからね」

俺や一方通行なんかは、幼い頃からレベル5として扱われてきて親や友達にも恐れられてきた。まともな居場所は無かったし、愛情だって受け取ってこなかった。だから今、御坂の持つ甘さとか愛情だとかが心地良いのだ。それを一方通行も感じているからそばに置いているのだろう。
たかが後輩一人が、世界を破壊できる程の第一位と第二位の喧嘩を止めることができるなんて笑える。まあ、こいつ自身も軍隊一つ潰せる力を持っているが。

「おう!」

世界はみんな、この小さな女の子に感謝すべきだ。







学園平和論でも語りながら




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110803


拙宅の垣根さんはちょっと寂しがりやさんで御坂さんにデレデレ。このあとブランドのブティックで御坂さんのお洋服を二人で仲良くカスタマイズしてあげたことでしょう。
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