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御坂美琴はこの春、飛び級で大学生になった。

とは言っても元は高校生なので5年も10年も周囲と年齢差があるわけではない。ただ、その優良生としての噂は風に乗って山火事の要領で広がり、初登校の日には動物園の檻の中にいるようだった。

(……はぁ、)

ブラウスに黒いパーカーと黒いショートパンツを合わせた、普通の女子学生より控え目な服装をしているのに、学校中の視線が浴びせられては閉口するのも無理はない。
学校長からは当大学において六人目のレベル5だと聞いたことを思い出す。この様子だと普通の友人ができる可能性は限りなくゼロに近い。それならば、

(よし、他のレベル5の人達となら仲良くできるかもしれないわよね)

テラスの椅子にもたれかからせていた身体を起こして立ち上がり、拳を握ってみせた、のであるが。

「え、なに?」

黄色い声の飛び交う空中庭園が途端に静まり返ったのだ。その静かな空気の中で二つ三つ声が聞こえた。それだけがこの空間に許された声のように。

「おっ!お前が噂の第三位?可愛い顔してんじゃねえか」
「なんだ、今年の新入生の中で首席っていうからどんな天才お嬢サマかと思えば、ただのクソガキじゃない」
「本当、カワイイわねぇ。虐めたくなっちゃうかもぉ」

上階を見上げると二階ほどだろうか、見下ろす者がいた。その男女四人の値踏みするような視線に御坂は苛立ちを覚えた。年上であろうが、彼女にとっては関係ない。

「ちょっと、さっきから聞いてればガキだの何だの勝手に言ってくれちゃって失礼じゃない!名前くらい名乗りなさいよ!」

そう言った瞬間に大衆がどよめいたところから察するに彼らはこの大学でも相当な権力を持っているようだった。その当の本人達は顔を見合わせた挙げ句、からからと楽しそうに笑っていたが。

「はは、悪かったな。まさか俺達を知らねぇとは思わなくてよ」

バサリ、と鳥が羽ばたくような音がして、男は御坂の目の前に降り立った。

「俺は垣根帝督」
「かきね、ってまさか第二位の…」
「そうよ、みーんなあんたと同じレベル5」

いつの間にか、彼らはテラスに降り立っていた。しかし数が合わないということに彼女は気付いた。御坂で六人目のはずなのに、この場にいるのは茶髪の男女二人、金髪少女一人と何故か根性、と呟いている学ラン男子の四名だ。

「さァて、皆さンお揃いですかァ?」

現れた少年の姿に御坂は目を見張る。明らかに格の違う雰囲気と何よりその人間離れした白髪と赤い瞳が印象的だった。
名乗るまでもない、彼は――。

「能力は一方通行ァ、レベル5の第一位でェすって足りねェ頭に叩き込ンどきな。第三位の御坂美琴ちゃンよォ」

ご丁寧な挨拶に、もう一度だけ全員を見渡して悟った。

(……仲良く、なれないかも)

御坂美琴の大学生活の初日は壮絶な出逢いの下に幕を閉じる。




美味しいお肉を食べたいのですが、



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110723



長編連載でぐだぐだやっていきたいと思います。主に御坂さんが先輩に振り回されるお話。文体も軽めに書いていくのでさらっと暇つぶし程度に読んでいただけたらと思います。
学内で彼らは某少女漫画のイケメン金持ち集団の如き扱いをされてますが、人気はないどころか独裁政権的存在。
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