ハニー付け難解ロジック








私、上条当麻は、ただいま激しく後悔している。
ゲームセンターにて、いつもと変わりない面子で暇潰ししていたのは昨日のこと。何となく土御門に勝負を仕掛けられてバトったのは、ゲームセンターに入って一時間後のこと。そんでもって行き場のない戦利品を御坂にプレゼントしたのは本日のこと。

「かーわいーっ!」
「あのー…御坂さん?」
「黒子ったら私が買ってくると幼稚だ何だってうるさいのよねー。だけど、貰ったものなら文句は言えないだろうし」

ねー、と語りかけているのは一番のお気に入りらしい、カエルのぬいぐるみだった。
口うるさい後輩に溺愛されている哀れな先輩は、ぬいぐるみ一つ部屋に置けないらしい。見た目には似合うのに、性格とは真逆の少女趣味の御坂にとっては自分の座高ほどもある大きさのぬいぐるみは憧れだったに違いない。

その可愛い彼女の望みを叶えられたことは俺としても嬉しいは嬉しい。そりゃあ喜んでくれると予想もしていた。


だけど、ここまで彼氏を差し置いて、ぬいぐるみにご執心とはいかがなものですかね。そいつには俺が見たことのないような笑顔を振りまいてるし、べったりくっついてるし!
年上の俺が妬くなんて、みっともないとは分かってる。でもこのまま見てるだけなんて男が廃るってもんだろ?

「なあ御坂、」
「んー?」

幸せでとろけたような表情が見る見るうちに真っ赤になっていく様子は、小学生の頃に実験で使ったリトマス紙の反応に似ているなあ、と他人事のようにぼんやりとした頭で考えていた。
御坂を押し倒している乱暴な男は、他の誰でもない俺だっていうのに。

「なっ…に、すんのよ!このばかぁ!」
「あのカエルさんに妬いてしまった上条さんはどうすればいいでせうか」
「は、あ?」
「つーまーりー、お前が好き過ぎて本当に頭おかしくなりそうなんですが」
「っ!……やっぱりバカよアンタ」
「……だよな」

どうして年下の中学生なんか本気で好きになったか、なんて聞かれても応えようがない。好き=好き、みたいに俺の頭は単純だ。プラスもマイナスも、例外も但し書きもない。全部、簡単な論理で出来てる。

「…で、も、それ私も、だから」
「え?」
「あ、アンタのせいで私までバカになっちゃったんだから責任取りなさいって言ってるのよばかばかばかー!」
「うわ、ちょ、取ります取ります喜んで取らせていただきますから電撃は!ちょっと待てえええええ!!」

そうそう、この電撃姫はデレるともれなく電撃プレゼントという特典付だ。だからまず俺は、このお姫様に右手で触れなければならない。それからカエルさんに復讐するべく、御坂の唇を奪ってしまおう――という計画は俺の不幸スキルで呆気なく散った。
なぜなら、「キスしていいか」なんて了承を取ろうとしたら見事にマックスで電撃を放たれたからだ。御坂曰わくそういうことは聞くなとのお達しだ。
乙女心はイコールで結べるほどに簡単ではいかないらしい。相当難解な論理である。




end.

----------------
110523

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -