パンタ・レイ

※ぬるいけど背後注








まず初めに映ったのは反吐が出るほど見慣れた天井、そして眼球を抉るような朝の日差しだった。

「おはよ」

斜め下から腐るほど見た、だが何処か異なる顔立ちの女があどけなく微笑っていた。だから勝手に俺のシャツを着るなと言っただろォが、と言えば勝手に制服剥いで飛ばしたアンタが悪い。何をしていたのかと聞けば寝顔を見てただの何だの。

「ね、拗ねないでよ。かわいいんだからいいじゃない。アンタの寝顔、私は好き」
「……昨日、喘ぎ狂ってたと思えば頭のネジぶっ飛ンでやがったのか」
「アンタだってリミッター外してたくせに」

俺は、こういう時のこいつが苦手だ。完全に覚醒していないのか平常より恥だとか理性の部分だけがすっぽ抜けている。汚ェ言葉を選ぼうが何だろうが平気で返してくる。虐め甲斐のねェ。
「ねぇ、いいでしょ?」ピントの合わなくなった唇が許しを乞うが形だけだ。どっちにしろ止める気はこいつにはない。
しかし熱を孕んだ一連の行動は前触れもなく、ぴたりと止んだ。

「……、」
「どォした」
「ううん、何でもない」

今度は背中向けてだんまりとは本当にめんどくせェ。

勝手に抱え込んで、またどうでもいい事を背負いこむ。凡人なら助けてくださいと簡単に言えるだろうが、こいつは別だ。御坂美琴は周囲にとっていつまでも完全無欠のヒーローでしかない。被造ヒーロー像なんぞ捨てればいいものを他人の為に後生大事に守ってやがる。
自慰ならぬ自傷行為がタノシイなんて聞いたこともない。先天性のマゾか、こいつは。

そのとき放り出された携帯電話が点滅していることに気付いた。さっさと取れ、と無言の圧力で強制操作されて通話モード。便利なこった。
妙な口調で二言目には仕事だ書類整理だとほざく金髪シスコン野郎を適当にあしらってぶち切ってやった。

「で?また仕事?」
「あァ」
「ふぅん。さすが第一位は忙しいのね、私と違って。じゃあ帰るからさっさと制服、取ってくれない?」
「つゥかさっきからなンなンだよ、その不っ細工なツラは。拗ねてンのか」
「はあ!?す、拗ねてなんかないわよ!別にアンタと過ごせなくなっちゃったからって私は何とも……」
「へェ。俺は仕事だとは言ったが、別に"外の"仕事とは言ってねェがなァ」
「へ……?あ!」

本当に、めんどくせェのに分かりやすいやつ。電磁波を感知してまた置いてけぼりを喰らうと予想したらしい。

「あああの一方通行…?」
「ひでェよなァ…無実の人間に冷たく当たるなんてよ。ということでェ、ガチでシカトしてくれた美琴ちゃンには罰として賠償金をお支払いしていただきましょォか。もちろん肉体労働でなァ」
「ええ!?ちょっ、」

好きだとか。ホテルに入り浸ってやがるガキ共が大安売りしてる言葉は言ってやらない。そう言った瞬間にこいつは俺が好きになった御坂美琴であろうとするからだ。血塗れの肉塊よろしくベタついてるアベックのドラマ見るより万物流転っつーのを学べってンだ。

人は変わるってことを。


end.


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110518

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