子宮が孕むオストワルト
※グロ注意









時刻は午前三時。
決まって、その上機嫌な声はこの時刻に響く。

「一方通行、眠いの?なら今日もお話、聞かせてあげようか」

耳朶に触れる柔らかい唇は、これから俺の心臓や肺を、確実に突き刺して血を噴き出させる。余程、嫌な顔をしていたのだろうか。膝の上に乗った女は、心底嬉しそうに微笑んだ。
額と額が合って、頭の中に言い得ぬ衝撃が走った。

「むかしむかしあるところに、街で一番可愛い女の子と王子様がいました。王子様はその女の子を毎夜、舞踏会に招きました。彼は女の子が大好きだったのです。今日もまた、彼は心踊らせながら夜を楽しみに一日を過ごすのでした。舞踏会が開かれる場所は、廃操車場でした。星明かりの綺麗な夜でした。男の子が着くと女の子はもういました。さあ、楽しい楽しい舞踏会の始まりです。逃げ回る女の子を捕まえて足で真っ白な脹ら脛を踏みつけると女の子は綺麗な歌を歌いました。その声と管が切れる音と血の滴る音が奏でる陽気な音楽は、毎晩男の子を愉しくさせます。そして女の子は魔法にかけられたように真っ赤なドレスで男の子に手を伸ばしながら踊るのです。彼がその手を取ると、ぶちりとまた一つ、至上の音が――」
「ぅ…っ…」

胃から込み上げてくる吐き気だとかが嗚咽となって口から吐き出された。それでも、動悸や異常に噴き出す汗は止まらない。いっそ全て吐き出せてしまえば楽なのだろうか。こんな馬鹿げたことを考える頭は、またもイカレたらしい。

こいつは、いつからかこうして俺の記憶を探っては毎夜、物語を読み聞かせるようになった。それはガラスの靴を落とした女の話だったり狂った靴に取り憑かれて足を切られた女の話だったりした。
人間は忘れなければ生きていけない。そんな忘却機能をぶち壊して、忘れかけていた何かを引きずり出す。きっかけさえあれば、『優秀な脳』があの光景を思い出すことなど簡単だ。感覚や感知したものが鮮烈に蘇ってくる。見たもの聞いたもの嗅いだもの触ったものの全て。

目の端に滲む何かを細い指がゆっくりと拭った。

「泣かないでよ、一方通行。素敵なお話じゃない」
「るせェ」
「棄てられるのが怖い?辛い?悲しい?」
「…だったらどォする。また舞踏会ごっこしろってのか」
「ううん」

女特有の髪の匂いと抱擁に満たされることを覚えた。それが中毒性があるだとか下らないことは、もうどうでも良い。

「私がずっとそばにいてあげるから、ね」

このまま感じるもの全て、こいつが侵食してくれればいいのに。そう考えることすら、毒されている証拠だということを俺は最後まで知ることはなかった。




子宮が
孕むオストワルト






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110829

リクエストのヤンデレールガンより。傷付けないヤンデレというテーマの下、書いてみました。あと監禁、調教なんかをキーワードにプラスしてbgmは某曲。
最近は綺麗な恋愛より、なりふり構わず必死にもがいて掴む恋愛が好きです。


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