檸檬なんてきらいよ
※アンドロイドパロ










『MMS会社叶サアンドロイドシスター仕様』

などという胡散臭い代物に珍しく好奇心を示してしまったのが運の尽きか。一方通行は、どこぞの無能力者のように不幸を叫びたくなった。

「おはよう、ご主人様」

凡そアンドロイドだと思わせない技術の巧みさに少しばかり感動を覚える。そのアンドロイド(シスター仕様)の彼女は、銀髪をふわりと揺らしながらにっこりと微笑んだ。マニアックな隣人が購入して不運にもその火種が飛来したものだが、これはもしかすると、そう不幸でもないのかもしれないと判断するにはまだ早かった。

「オマエ、名前は」
「インデックスっていうんだよ。ご主人様は?」
「…一方通行」
「あくせられーた。うん、入力完了!ねぇあくせられーた!」
「あン?つゥかオマエ服、」

裸のままにも関わらず、インデックスは犬が飼い主に飛び付くように彼にのしかかると薄い腹の上に跨がって満面の笑顔で、こう言ったのだった。

「ごはん、食べたいんだよ!」

やはり不幸だった。









「高性能アンドロイド、ねェ……残飯処理機の間違いじゃねェのか」
「む、失礼なんだよ!私はれっきとしたご奉仕様アンドロイドなんだから」
「つゥか何なンですかァ?MMS会社って聞いたことねェぞ」
「マジカルミラクルスーパーコーポレーションの略なんだよ!」
「ネーミングセンスの無さに笑える域だなそりゃ」

金銭面では何の不自由もない彼だったから良かったものの、隣人にはとても支払えそうのない額面の食糧を平らげる彼女には流石の一方通行も面食らった。ちなみに今は、同梱されていた修道着を身に付けている。

アンドロイドなど信用していなかったが説明書を読むと現実味を帯びてくる。頭痛に耐えながらも、その説明書をものの十秒で読破した。基本的な操作や弱点、オプション、そして記憶喪失に関する注意書き。

「ふーぅ、お腹いっぱいなんだよー。あくせられーた、膝貸してもらっていい?いいよね」

これではどちらが奉仕しているか分からないではないか、という文句は少女の心地良さそうな表情を見れば引っ込んでしまう。
インデックスにはそういった、一方通行の苦手とする部分全てをわざと選んで設定された、そんな性格を持っていた。その内の一つがこの無邪気さであり、あどけない笑顔だ。

「あくせられーた、あくせられーた」
「……なンだよ」
「ふふ、私はあなたの為に生まれたんだよ。だから何でもしていいんだよ」

くだらない。一方通行は溜め息を吐き出した。男がこういった物を手に入れてすることは決まっている。技術が進歩してもその類の欲望が衰えることはない。

「…何でもしてくれるンだよなァ」
「うん!」
「なら、『何もするな』」
「へ?それってどういう、」
「俺を喜ばせようとすンなって話だ。命令に従わねェなら今すぐ追い出す」
「ええええええ!!」

何で何で、男の人はそういうことしたいんじゃないのまさか私はそんなに魅力がないのかな調整にいくべきなのかな!などと喚くインデックスを横目に、テレビをつけた。

「…気に入らないかも」

視界を塞ぐように彼女は起き上がって膝の上に跨がった。異色同士のエメラルドグリーンとルビーがぶつかる。その大きな瞳にはじわりと涙が滲んでいた。

「私はあくせられーたの為に生まれて、あくせられーたの為に生きてるんだよ。だからあくせられーたも私のことだけ考えてればいいんだよ!」
「生憎、俺はそンな暇じゃねェ」
「ふっふーん、いいんだよ!そのうち暇じゃなくなるんだからね」

恐らく彼女の中で一番悪いだろうと思われる可愛らしい笑顔は一方通行に何の恐れも与えないため意味を持たないが。

「私でいっぱいにしてあげるんだよ、あくせられーた」








檸檬なんてきらいよ





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110821

禁書通行のリクより指定がなかったので一度やってみたかったアンドロイドパロ。インさんは常に構ってちゃんで、ふといなくなった時にやっと大切だと気付くテンプレートな一方さんをカスタマイズしたいです。最終的に記憶喪失回避に向けて走れヒーロー展開を期待!


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