◎電磁通行


※美琴さんと一方さんの共闘続編








あの路地裏の会話から学園都市最強のタッグとも称されるだろうほどに二人は息の合った戦闘をしていた。遠距離攻撃の可能な御坂と三次元の支配者とも言える一方通行に勝てる者など世界に片手で数えられるほどいない。
しかし如何せん彼らは今日出逢い、新人だという事実に変わりはない。つまり、こういうことが起こりうるのだ。

「ちょっと!そこ邪魔なんだけど!あー!!」
「ンだよ。るせェな」
「私の電撃まで反射しないでよ!磁場が崩れたでしょーが!」
「あァ?ンな小細工しねェでも防げンだよこっちは」
「私は見殺しにするつもり!?」
「だからオマエの分も、」

防いでいたの『だった』が。直後に、槍のようにミサイルが降り注いだ。もちろん能力使用中の一方通行にとっては土砂降りの雨、程度で痛くも痒くもない。
しかし一方通行に崩された磁場のせいで繋がりの途切れた細い電磁波が機能しなくなった御坂は。

(はは、ちょーっとヤバいかも)

相棒には言っていないが、路地裏の前の初めの襲撃で彼女は右の二の腕に銃弾を喰らっていた。だから今まで超電磁砲は放っていない。彼がそれに気付いたら馬鹿にされるかお荷物だと切り捨てられるに決まっているのだ。それは御坂のプライドが許さなかった。
と、その時、彼女の白い頬を銃弾が掠めた。

「つっ…」
「どうした…って、オマエ、」
「うっさいわね。ちょっと切れただけよ」
「…そォいえば何で今日は超電磁砲撃たねェ?これまでのオマエの攻撃パターンは、全身から飛ぶ電撃雷撃と磁場による金属の操作攻撃…まァどれも脳に頼ったもンばっかだよなァ。しかも半身から飛ぶ電撃の四分の一が特定された位置から0.158度ズレてンのはふざけてンのか」
「う…」
「その押さえた右腕はどォしたンですかァ」

飛んでくる銃弾全てを粛清しながら御坂に近付き、彼女の左腕を剥がすと痛々しいまでに真っ赤に制服が染まっていた。
それを見た一方通行は顔を顰める。打ち止めも転んで怪我をしたときは、よくそうしていたことを忘れていた。何でもないように取り繕って、痛みを隠して。

「…くは」
「…なんか嫌な気がするんだけど、余計なことしようとしてないわよね」
「余計なことォ?ンなことするわけねェだろォが。せーっかく愉しくなってきたっつゥのによォ」

あーあ、と御坂は溜め息を吐く。妹達から聞いていた。彼が『ミサカ』の名を持つ者には不必要なまでに優しくなったこと。それと同時に彼女達に危害を加える者には不必要なまでに制裁を行い、再起不能に陥らせることを。

「あァ、やべェなァ。愉快過ぎてイっちまいそォだ」

凶悪な笑みを浮かべて、御坂が戦慄するほどの演算を始めた一方通行に呆れながらポケットの中から数枚のコインを取り出す。

(今日の最後の私の仕事は、こいつの暴走を止めることか)

哀れな数千人の反乱集団にこれ以上ないほどに同情した。





end.











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