◎電磁通行止め


(…なにやってンだこいつら)

風呂から上がった一方通行は、テレビの前に二名、揃いも揃って毛布を頭から被っているお化けを見つけた。片方は、打ち止めとの約束で泊まりに来た「お姉様」こと御坂美琴である。彼女達は、どうやら夏休み特番のホラー番組を観ているらしい。
さほど興味の無い彼は、二人の後ろのソファにどっかと座ると雑誌を徐に開いた。

「ね、ねぇお姉様、あれなに?ってミサカはミサカは尋ねてみる…」
「え、ど、どれ?」
「ああのエレベーターのモニターの……ひっ、」
「「ぎゃああああああ!!」」
「だめだよそっち向いたらいるんだよ!ってミサカはミサカは、」
「ちょ、待って、鏡にも何か映ってるー!」
「うわあぁぁんお姉様ぁぁ!」
「打ち止めぁぁあ!」

ひっしと抱き合う姉妹にちら、と視線を送り、溜め息を吐いてページを捲った。
その溜め息の意味するところは厄介事が起きなければいいが、ということだったのだが予想通り、その厄介事は訪れる。
夜、皆が寝静まった頃、隣の部屋から女のすすり泣く声が聞こえる。幸いにも打ち止めは叫び疲れたのだろう、ぐっすりと寝入っていた。

「オイ、何泣いてンだ」

びく、と布団の塊が跳ねた。布団の裾から打ち止めと似通った癖毛が覗く。

「うっ…ごめん、起こした?」
「偶々起きてたンだよ。ンで?美琴ちゃンは幽霊が怖くて寝れないのかなァ?」
「……ちがうもん」
「そォいや最近聞いた話なンだが第七学区のとあるマンションに女の、」
「いやぁああぁあぁ!聞こえない聞こえない何にも聞こえないぃいぃ!」

一方通行に飛び付いた塊はガタガタと震え、誰から見ても怯えていることが分かる。
ここがどこであるのか。無論、幽霊やお化けといった不確かな存在を否定すべく科学的論理に基づいて成り立つ学園都市だということを、その都市の第三位に君臨する少女は忘れてしまっているらしい。

「やっぱり怖ェンじゃねェか」
「だ、だって、怖いもんは怖いんだからしょうがないじゃない…。ね、あのさ…一緒に寝ていい?」
「はァ?」
「打ち止めとは寝れて私とは寝れないの?」
「…そういうンじゃねェ」
「だったらいいでしょ」

今の御坂は一方通行が男だとか御坂が女だとか、そんな些細なことは気にしていられないようで、彼が打ち止めを起こさないように布団を被るとすぐにその隣へと滑り込んだ。終いには手を繋いで欲しいと懇願した彼女を拒める筈もなく、左腕は打ち止めに、右手は御坂に拘束されたまま、その夜を過ごしたのであった。
朝、起床したときに彼の身体にどっと疲労が押し寄せたのは言うまでもない。








end.









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