◎電磁通行


現在時刻、18時24分13秒。建物の間を縫って夕日が差し込む路地裏に一組の男女は肩で息を切らしながらそれぞれに身体を壁に預けていた。
室外機に座った少女がぎろりと少年を睨む。どうやら恋人同士、ではなさそうである。

「こんな状況に陥るためにあんたと組んだんじゃないんだけど」
「うっせェよ、てめェこそ勝手に突っ走ってンじゃねェ。前出られたら反射できねェだろォが」
「あんたの能力制限の為じゃない!」
「オイ、能力使うなよ」
「……分かってるわよ。居場所が知れるんでしょ」

ふう、と互いに息を吐く。目的は同じだというのに二人の間には余りにも大きな確執が存在するが故に気が合わない。御坂は組む前に一時休戦と心に留めたのだが、理性より本能で動いてしまうのだ。
信頼できない相手と協力はできない。

「……なァ」

返事はない。
明らかに意識された沈黙だった。

「下着見えンぞクソ女」
「なっ、なななに、あんたっ、」
「いいから聞け。後で焼こうが潰そうが好きにしろ。だから今限定でいい。……ちったァ信頼しやがれ」

御坂はパッと顔を上げた。この少年からそういった言葉を聞くのは初めてだった。少女の視線に気付き、バツの悪そうな赤い瞳が逸らされる。

「だったら、あんたも信頼しなさいよ」
「あァ?っ!」

御坂の手が一方通行の手を掴んだ。
無意識の反射が起きていたならば、御坂は一瞬にして肉片と化していたのだが――。

「危ねェだろォが!」
「信頼しろって言ったじゃない。抱きしめてあげても良かったんだけど?」
「…ンなバカなことしてたら、あっという間にミンチだったなァ」
「今日の夕飯がハンバーグじゃなくて良かったわ」

室外機から身軽に降りた御坂はそのまま地に手を付いて磁力を操り、槍を生成していく。一方通行も忍ばせていた小型銃に弾を装填し直した。
数秒も経つと闇の向こう側からバタバタと足音が聞こえてくる。

「さァて、タノシイ絶頂のお時間でェすってかァ?」

――今、二人の天才が牙を剥く。









(冷たいはずのあいつの背中は温かくて、私は確かにあの瞬間、「信頼」していた)



end.











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