仕返ししてくると思えば強く腕を引かれて、唇を押し付けられた。なんだ、あんたやっぱり発情してるだけじゃねぇか土方め。

「…っ、結局ヤりてぇだけですかぃ」
「仕置きを兼ねて、な」

ぬるりと舌が入ってくる。やれやれ沸点の低いひとだ。子供の悪ふざけひとつやふたつ笑って流せないのか。カルシウム摂ってくだせぇよカルシウム。

「っ…似てっかもしんねぇけど、セーエキはタンパク質ですぜ?」
「……かわいくねぇ」

吐き捨てた息はタバコの匂いがして、口の中に残った味と一致している。そしてまた深く舌が侵攻する。いつまでする気なんだと思考を漂わせていると、徐々に身体が沈んで行くのがわかった。抵抗を試みてもすでに湯船が耳まで来ていて少しでも遠下げるために不本意だけど土方さんにくっついた。

「勘違いしねーでくだせぇよ。好きでこんなことしてんじゃ、」
「そーかい。お前も素直になれよ」
「はっ、誰が……っ!」


前触れもなく身体が降下し、キスしたまんま土方さんごと湯船に沈む。何を考えるか解らないけど唇はお湯が入ってこないようにか、角度を変えまるで口ごと噛み付かれているようだった。視覚が機能しない状態下で口の中で蠢く舌と舌の感触が嫌でもリアルに感じてしまう。

(…うわ、ぞくぞくする)

コポッと空気が漏れる音が聞こえる。そろそろ、苦しくなってきた。多分涙目っぽくはなってるんだろうが、お湯の中じゃ飽和していくだけ。顔の横で固定してくる土方さんに 苦しい って伝えようと首に回した手で髪を引っ張る。一瞬ぴく、と反応はするものの行為を中断させるつもりはないようだ。もう一度、今度はさっきより強く引っ張ってみる。流石に気付いてくれたらしい、が。

「ーーーッ!」

俺が抵抗したのを気に食わなかったのか口付けは深くなった。土方さんの舌が根本まで入ってきそうなくらい、俺の口の中はいっぱいいっぱいで息を乱され酸素の消耗も激しい。苦しくて目尻が熱くなって、泣きたくなった。ほんとに死にそう。

(あ、やば…ひ、土方さ……っ…ふ、しぬッ)



「…ッぷは!!…は!ふあぁ…っ」

ふいに空気が戻り、口を離された。おかげで必死に呼吸を続けるがほぼ無酸素状態だったため、体力の酸素は逆に毒だった。

「はあ、ぅあ…ゲホ!」
「…すまん」
「っ、あんた…しねよ…ッ!」
「いや、本当に悪かった」
「悪ふざけにも、程があらぁ…ひとが、まじで死にかけだって、言ってんのに」
「…悪い総悟」

こっちはもう窒息死しかけで苦しんで今も呼吸すんの辛いし涙ぼろぼろだし頭くらくらするし、なのになんでコイツは息ひとつ乱してねぇんだよ!

「ぐす……あんたとキスするのトラウマなりそう」
「そりゃ困るな」

ぼろぼろと頬を伝う涙を拭われ安心の余りまた涙がこみあげてくる。

「総悟」
「………このくそ土方ぁ」
「でも発端はお前だろ。この際懲りたんじゃねぇの」
「………懲りた。土方コノヤローとはもうキスしない」

あとセックスもだ。1週間、否最低1ヶ月は絶対触らしてやんねぇ。土方のくせに土方のくせに土方のくせに!!



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