▽リクエスト1
シリアス系垣一






彼は傷一つない陶磁器のような自分の真っ白い肌が嫌いだった。



高校生程度の男子二人分の重みでベッドのスプリングが軋む。そういうホテルであるにも関わらず、彼らは服を着込んだままベッドの上で組み合っていた。


「あー、やっぱ消えてんなあ前つけたやつ」

「オマエ顎筋鍛えろよ温ィのだったらぶっ殺すぞ」

「おい立場分かってんのかてめぇ」

言う割りには静かに後ろ髪を鷲掴みにした。罵声だが二人にとっての会話としては上出来なのだ。
一方通行は僅かに眉をしかめたが、こちらに視線を合わせる。



「……次はもっと痛くしてくンねェ?」


ああ、とお望み通りに遠慮なく首筋に噛み付いた。
さながらその様は獣だろう。

「ッっ ぐ、」

皮膚が裂けるような痛みからか、弧を描くように反った一方通行の喉からくぐもった声が漏れる。
垣根はそれを気にすることもなく、皮と肉の感覚を味わいながら、ゴリ、と犬歯に力を加える。

どうやら第一位や俺のような化け物でも内心どこかで人らしさを求め、人的に欠如したものを埋めようとしたがる計算が無意識下で行われているらしい。こいつ、第一位の場合は痛みを感じること。能力を発現させ"一方通行"を我が物にした頃からは既に反射の膜は適用されていたと聞く。如何なる事象からも自分を守る最強のシェルターであるはずのそれを解き第一位は、均一に白く白く白い膚に、他者の手により傷を負うことで抜け落ちた機能を幾つか補充していた。

俺はというと、序列第二位である自分の上に踏ん反り返って玉座に君臨する第一位である彼を加害することで沸き上がる高揚と快感を覚え、満たされていく何かがあることを知った。
需要供給が一致してしまった。気味の悪い依存関係が出来上がっていた。


「――どうだよ。お望み通り青黒くなったぜ?」

「 ン、…たり、ねェ」

口を離すと鎖骨の上の皮膚に世辞でも愛の印とは言い難い、鬱血し青黒く変色しつつある歯形がくっきりと映えた。
垣根は一瞥して首に手をかける。そしてゆっくり絞め上げていく。
じわりじわりと酸素の供給を奪っていけば、一方通行が口をぱくぱくと動かし生にすがりつく。
垣根にとってはこれは"優しさ"である。


「…がァ、ッ、!い゛っ ……ア゛」

首を絞める行為自体は少なからずしてきた。最初に誘ったのは一方通行だった。
正直、このまま殺してしまおうかと思った。何度も何度も何度も馬鹿みたいだろうこんな傷の舐めあいは。終止符を打ってやればこいつは…知らねぇけど俺は繰り上がって第一位、つまりメインプランとして存在できる。

だが、この無防備な彼をこれまで殺していないのは、また垣根自身も人間らしさに縋りたい故にか。

「―――ッっっ゛ゲ はァ……っ…!う゛く、ンあ、はァっ…!」

「ハッ、イイ面してんじゃねぇか。んな面出来んのは人間サマくらいだぜ?良かったなぁ一方通行」

「ンっ…ふはァ……あっはァ………きも、ひィ …おれ、…」

垣根はこの上ない愉悦を口角を上げて表し、焦点の合わない一方通行の頬を殴った。








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