!百合
!生理ネタです
!付き合ってないけど定期的に体の関係を持つかんじ
あら、今の方は。御坂様……?御坂様じゃなかったかしら?御坂様?常磐台のエースたるお方が廊下を大股で走るなんてそんな……人違いでしょう。
御坂美琴は勢いよくトイレの個室に籠もった。運良く誰もいないのは昼休みの終わりが近いからだろう。全力疾走した後の昼下がりの廊下では、きっと女子特有のひそひそ話が秘めやかに行われているだろうが承知の上だった。
「それどころじゃ、ないの、よ…」
躊躇いなくスカートの下に履いていた短パンごとショーツを下ろす。美琴はやっぱり、と溜め息を吐いた。思った通りに、白基調のショーツは赤黒く糸を引いていて所謂、生理になっていた。
(どうしようどうしようナプキンなんて常時用意してないっての……!)
だからといって誰かに借りるわけにもいかない。そもそも誰かという不特定多数は具体的には誰を指すというのだ。
(友達がいないわけじゃな…友達というかクラスメートだしそれに私が話しかけるだけでもあの対応だしっ……仕方ないことなんだけど、じゃなくてナプキンどうすんのよぉぉぉ!」
終始抑えきれなくなって叫んだことにハッとして口を押さえるのも後の祭り。授業開始時間が近いのが幸いだったようで、周りから声は聞こえない。
否、かつかつと此方へ近づくような足音を捉え美琴は息を殺した。まさか聞かれていたのではないか、人物を確認しようとしているのではないか、と。
その足音は女子トイレ内のパブリックスペースで止まる。こほんっ とどこかわざとらしい咳払いを美琴は何処かで聞いたことがあるような気がした。
「みーさーかーさぁん。常磐台のエースたるものがトイレでランチなんてとんだユーモアよねぇ」
「………何でアンタがいんのよ」
「それは救世主様に言う言葉なのかしらねぇ?」
「どういう意味よ」
「貴女が一番解ってるんじゃなくて?」
足音は私の個室の前で止まった。甘い猫なで声の言うとおり、下の隙間からナプキンを受け取り私は窮地を間一髪逃れることができた。
「一応礼は言っておくけど、何でいんのよ。能力がこんな広範囲でも届くとでも言うの?」
「まさか、偶然よ。ただのぐ・う・ぜ・ん」
「嘘おっしゃい気持ち悪い。何が目的よ」
「ホントよ?私が偶然御坂さんに逢いたくなって、擦れ違う子皆の頭覗いてみたら偶然御坂さんらしき人を見ていて、その情報を便りに歩いていたら偶然叫び声が聞こえただけだもの」
ね?と微笑む彼女は実に可愛らしい顔立ちだが腹に何を抱えているか分からない女、ということを美琴は知っていた。だからこそ、ナプキンを受けとる際も少し躊躇した。この借りは返さなくてはならないのだから。
「愛とかダメかしらぁ?」
「アンタ痛い子みたいよ」
「学生は許されるのよ。ねぇそれより、本鈴とっくに鳴っちゃってるのはご存知?」
「……今から出る気にはならないわね。てかアンタこそ」
ちゃらり、と食蜂はキーをスカートのポケットから出して見せた。
「第二応接間のソファーってなかなか悪くないのよねぇ。広いし」
「アンタこういう人間だったわね」
「借り、返してもらおうかしら?」
面倒くさい女、と思ったが今からクラスへ戻り、遅刻した理由を話したりひそひそ話だったり諸々は数倍疲れるのだ。それに、たまには体裁なんてガン無視してこいつに鬱憤晴らすのも悪くない。
「……仕方ないわね、借りを返すだけよ。操祈」
私いま見ての通りオンナノコだから配慮しなさいよ。
食蜂は一度ぱちくり、と子犬じみた目で美琴を見てから、キスならいいのよねぇ?と笑った。