センパイコウハイ垣一/学パロ
垣一←土
「ぶは、まじでしてやがんの!」
「‥‥何しにきたンだよォお前は!!」
シンと静まりかえっている此処、図書室で盛大に図書委員専用腕章を装着した一方通行の声が響く。人は疎らとはいえ注目はそちらへ向かう。垣根はからかうように指を立てて静かにするよう促した。
「しー。図書委員さんが読書家どもの邪魔すんなよ」
「お前が邪魔してンだろ俺の。つうか何で居ンだよ何で俺が此処に居るって知ってンだよ不思議。ぶち殺したいンだけど」
「先輩サマの情報量を甘く見んなよ。お前の学校生活における行動なんかお見通しだっつーの」
「まじきめェ。ってことは授業中俺がしこたま垣根くンの名前書いては赤ペンで掻き潰す作業も見られてたンかァ」
「何ソレこわい」
流石に冗談だって、と呟く垣根に一方通行は一息おいた。こいつと会話のドッジボールを始めるときりがないからだ。
会話を中断させ、貸し借りのカウンター席で図書委員としての業務を再開した一方通行を垣根は物珍しい目をした。
「あの一方通行がねぇ‥よく引き受けたな。めんどくせぇとか言って一蹴するかと思ったぜ」
「コッソリ帰ろうとしたら下駄箱の前にいたンだよあの野郎」
「ふーん‥‥‥あの野郎ねぇ」
カウンターの上に重ね上げられた(おそらく一方通行が棚へ戻すであろう)本を一冊手に取り、パラパラとめくる。興味はないが、何となく視線を通し、パタンと閉じて呟く。
「あの野郎って結局何?」
「は?」
作業を中断させられて心底うっとおしそうな表情を向けられるが、どうしても気になるのだ。
何故かというと理由は単純明快、一方通行をそうやって扱えるだけの存在がいるからだ。これは俺にとってはかなり重大なことである。
「あの野郎?あァ、あいつか」
「‥‥‥なんか言い方引っ掛かるんだが」
「ハァ?あいつのことは垣根くンのが知ってンだろ?クラス同―――ッひ!!?」
「いーつまで喋ってんのかにゃーアクセラちゃん?」
「土御門!!」
「よう垣根、お前もそろそろ騒ぐのやめろよ。あとコイツの手止めさせるのもやめにしてくれると嬉しいですたい」
いつの間にか後ろに忍び寄っていた土御門のわき腹ツンツン攻撃により、一方通行は椅子をガタンと揺らし本の上に突っ伏した。おかげでせっかく分類ごとに積み上げてあった書籍たちがバサバサと音を立て崩れ落ちる。
「ッッ土御門それヤメロつってンだろォが!!」
「しー。仕事増やしたやつにはもう一発お見舞いするかにゃー」
「土御門いつの間に俺んトコの子と仲良くなってんだよ‥」
「仲良くねェ!つゥかお前ンとこの子でもっ‥‥むぐぐ!」
「ハイハイ静かにと言ってるだろう。垣根、悪いがそっち側に落ちた本拾ってくれ。ほら一方通行もさっさと棚に戻してこい」
踏んだり蹴ったりな気分になりながらも一方通行はとりあえず「こいつらウザい離れたい」を最優先に渋々と配列に向かう。
残された垣根と土御門は、ふらつきながら本を抱える一方通行の後ろ姿を眺めていた。
「ったくモヤシのくせに無理しやがって」
「‥‥いやーいじり甲斐のある奴だにゃー。こりゃあ誰かさんも大層執着なさるわけだ」
「‥やらねえからな。あとわき腹勝手にわかってんじゃねえよ」
「俺には舞夏だけですたい。‥‥だが義弟も、 まあお前も一定のラインは守れよ。ホモ認めないうちはな」
「バッカ俺はセンパイだからいーの」
意味わかんね、と土御門はスルーした。垣根がこれ以上残念になろうが知ったこっちゃない。
(しかし学校一のモテモテくんがホモ予備軍だなんて知ったらどんくらいの子が泣くんだか‥‥御愁傷様だにゃー)