「土方さぁん」

す、き、
大袈裟に口を動かしそれからじぃとねだるような瞳が此方を捕える。なんだおめぇらしくねぇ、なんか腐ったもんでも食べたのか。そう普段通り直ぐに吐き捨てて書類に目を戻すべきだったろう。

「…総悟、戸閉めとけ」
「へーい」

だけどそうもいかない。素直に言うことをきいて戻ってきてまた腿を枕にしてくっついてくる総悟に武州の頃の面影が重なり、愛しさが込み上げる。今は恋人としてより、保護者としてコイツを見てきたからこそ味わえる、父母が我が子を思う気持ちに近いだろう。

「土方さん、頬ゆるんでますぜ?」
「お前ほどじゃねえだろうよ」

ジュウと煙草を灰皿に押し付ける。それは合図でもあった。

「ちゅーしてくだせぇ」
「言われなくてもやってやる」

くっつけては放して、またくっつけて角度を変えて、舌を絡ませて唾液を混ぜ合いながらゼロ距離に近い総悟の表情を覗いた。長い睫毛がゆらゆら揺れる様が性を曖昧にさせる。

「‥総悟」
「土方さん、俺今すごい幸せでさ」

目をきらきらさせとろけるような口振りだった。俺は目尻に額に頬にと触れるだけの口付けを施す。

「えらく素直だな」
「土方さんだって気味悪いくらい優しいしかっこいいじゃねえですか」
「馬鹿野郎、気味悪いは余計だっつーの」
「‥ん、」

今感じている幸せ、が身体中の血管に浸透したならば内側から溶けてひとつになれるかもしれない。
根拠も前例もないあまい考えに委ねたまま、もう一度深く唇を重ねた。


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