二年後
視線が空でピンと一直線を描く。
僅かにだけ期待に揺れる瞳を逃しはしない。ふい、と冷静を装って顔を背ける動作も、それ即ちキスを許されている合図であるから。勿論、当人は無自覚であるが。
ティーポットをカチャンと音を立たせて手放し、皇帝の顎をとる。
「―失礼します」
「な、んッ‥‥!」
「‥‥口、空けて。舌でしますよ」
「んん‥‥命令、する なッ」
この時、鋭くこちらを見据えていた目がゆるやかに伏せられるのが堪らない。
「む、 んぅっ‥ んく‥‥」
遠慮がちに開いた口に舌を捻込ませると、案の定、皇帝は苦し気に呻いてから俺を押し返そうとした。
「 っはァ‥!お前調子に、っ」
無意味な抵抗と知っていての照れ隠しだと思うと、調子にも乗りたくなるんですよ。
ねろり、と意志を持った粘膜同士が触れ吐息の合間に水音が一緒になって吐き出される。皇帝の様子を伺いながら口を放してみると、はあはあと酸素を必死に求めるのが可愛らしくて、ついつい衣服に手が伸びてしまう。
表情を盗み見ると潤んだ赤い瞳の奥に僅かな葛藤が垣間見えた。脈有り、と勝手に頭の中で都合の良い憶測が叩き出される。と、ここで一発蹴りを受ける。でも確かに核心には触れた。ほんとに天の邪鬼なお人だ。