「その袋ン中、見てみろよ」
高杉がにやにやと俺たちに差し出した紙袋。俺はパック牛乳をすする総悟と顔を見合わせてから手元に寄せた。
「高杉ィー、なんでいソレ」
「テメー等にやるよ」
中身を覗くと目に痛いくらいにカラフルなピンクや紫、蛍光色の群れ。いかにも妖しげである。というかこれは所謂オトナのオモチャと形容されるものだ。阿伏兎が読んでたポルノ雑誌で見たことある気がする。
総悟が隣からにゅっと袋の中を覗き込む。
「なんだ、食いモンじゃねぇのかよ」
「クックッ。てめえも少しは色気ついたらどうだ沖田ァ」
「ていうか高杉これどこから?」
「貰った」
ふん、と鼻で笑う高杉。総悟はいつの間にか中にあったものの一つを引っ張りだして遊びはじめた。
「へぇ、高杉こんなの使う趣味なんだー」
「俺じゃねぇよバ神威。テメーのツレとか好きそうだよなぁこういうの」
「阿伏兎が?馬鹿言わないでよあいつが使えるはずないだろあのタマナシが」
「そのタマナシで抜けるお前はとんだ好き者だぜ」
「…その点はお互い様だろ」
ほんとにこいつはデリカシーがないというか、発言を弁えない奴だなあ。そこんとこは黙認してくれよ。
「…まぁ、そっちのタマナシヤローよりこっちの方が重度だけどな」
「ほんとに」
「ぎゃ!高杉神威ぃ、マジで超震えてやがるぜぃ!」
先程のバイブを手のひらで振動させ、ぎゃははと笑う総悟を半分呆れたような高杉が嗤う。
「沖田ァお前の彼氏にやれよソレ」
「あいつムッツリっぽいよねぇ。総悟から誘ってあげたらすごい喜ぶと思うよ」
「…バッカじゃねーの。俺はお前らみたいにマニアックなプレイ望んでねぇぜい」
俺たちが冗談半分でからかうとスイッチを切り、紙袋に投げる。外れて床に転がるそれはなかなか珍しい型をしていた。
「うーんやっぱり総悟には早いんしゃないかなあ高杉」
「そうだな。オメーらもさっさとヤっちまえよ。今から土方サンにアポとってやろーか」
「ややややめろぃ馬鹿杉!!俺はいいんでい、ちゅーまでで!!」
「「ちゅー まで?」」
しまった、と言わんばかりに総悟が口を押さえる。俺と高杉はアイコンタクトを取りながら、ちらちらと総悟を見る。みるみるうちに茹でタコ状態だ。
「総悟顔まっかー」
「ちゅーってお前ガキかよ」
「うるっせえ!お前らみたいな重度のホモじゃねぇんだよ!」
不利な空気が気に食わないのか、便所、と言って出ていってしまった。
「ウブだねぇ」
「つーか女子高生かよ。ちゅーはねぇだろキスだろ」
「まあ土方サンが話に出るだけであんなに照れちゃう方がホモっぽいよね」
「なんだお前気にしたのかよ」
「別にぃ」
総悟に置いてきぼりにされたスクールバックと袋から外れたバイブを手のひらでいじる高杉を見て一つ妙案が浮かんだ。
「ねぇソレ、入れといちゃおうよ」
にやりと表情で肯定を示す。宿題を見てもらうのはしょっちゅうあるらしいから、これで何かあれば面白いのになと開きっぱなしのスクールバックの口を閉じた。ちゅー止まりの総悟と土方サンはどうなるやら。想像するだけでも吹き出しちゃいそうだ。