「ゲッ、お前なんてもん食ってるアル」
「いや私だって好きで食わねぇよこんなブツ」
いつものようにあのサド女を探しがてら歌舞伎町を徘徊していたところだった。普段のルート通り、行きつけの団子屋を尋ねると案の定居たわけだが。
「これは土方のヤローが‥‥」
マヨネーズを並々とのせた団子を口にしようとしていたのだ!
「ふざけんなアル!!んなばっちいもんやめとくネ!!」
「私だってわかってらァ!」
「じゃあさっさと捨てるネ!」
「あ、ダメだっつうの!」
マヨネーズでばっちくなった団子を奪い、大きく振りかぶると必死に阻止される。
「捨てんのはだめでさ!」
「じゃあ食うのかエエ?おジョーさん黄色い汚物口入れるアルか?」
「汚物言うな!」
さっきまで口にするのをえらく躊躇っていたのに、今ので自棄になったのか勢いよく団子に食い付いた。こいつやりおる‥と感心したがそうじゃなくて!ほら見ろ口に手を当てて咳き込み始めた。
「おま、お前バッカアルな!!早く吐き出すアル!」
「ん゙ー‥!」
俺がばんばん背中を叩いてやったのに飲み込んだようだ。団子屋の長椅子にぐたりと横になり 死ぬ〜と言いながらも手にはちゃっかり団子が握られている。意地でも捨てないらしい。
「おめーそこまで食い意地強かったアルかー」
「なはず‥あるか‥‥うう‥」
「何でそこまでして食うんだヨ」
「今回は、私に非があるし‥ここの団子屋に悪ィし」
健気というかただのアホというか、ほんとにどうしようもない女だと思う。俺だって舌が利くほうじゃないけどその団子の味は見りゃ想像ぐらいつく。マヨネーズの強い酸味と団子の蜜の甘ったるいのとが、うげ、キモチワル。
そんなものコイツに食べないでほしいんだけど、捨てるつもりはさらさら無いようだし‥銀ちゃんこういう時どうすればいいアルか!
ああ、何でまだ食べようとするこのバカアマ!
「待て!!」
「は?‥‥‥なっ、」
団子を持つ手を掴みそのまま自分のほうに向け、勢いよく噛り付く。自分でも凄い冒険だけど俺だって男だ腹ァくくれ!ええいコイツが食うくらいなら俺が処理してやるネ!
「お前っ‥‥!」
びっくりしたような沖田の声が聞こえるが気にする余裕がない程、意外とコレキツい。残り3つ分串ごといったせいだ。酸味が‥‥!
惚れた相手の前でリバースするわけもいかない。なんとか拒絶するのを抑え無理やり胃に収めさせる。あ、でもコレまずいまずいヤバイアルぅ!!
「ッひとつ貸しだからなサド女コノヤロー!!」
目を真ん丸くした沖田に吐きそうになるのを全力で抑え叫んだがしっかり伝わったのだろうか。でももう一回言ったら確実に吐くと思ったから止めて足早にその場を去った。
案の定、万屋につく前に路上でリバースしてしまったのは言うまでもない。