!)二年後話
ぬるめ 気持ち的には新沖





「股、ひらけ」

「‥‥‥ハァ?」

いやいや意味がわからないですとバスローブを纏ったご立腹の彼に言うと、頬杖をついたまま眉間にシワをつくった。

そもそも何故ぼくはここに呼ばれてのだろうか。やはりバカイザーって言ってしまったのが悪かったのだろうか。彼はドS故のガラスのハートだからあんまり傷つくことを言うな、と山崎さんに何回も言われたからあの屈辱を晴らそうとしている可能性は十分ある。

「あの、バカイザーって言ったのはホントに謝りますんで勘弁してください沖田さん」

「‥‥だからバは小さく言えといったろう!」

やばいこれじゃあ逆効果だ。

「‥‥お前は何故此処へ呼ばれて何をするつもりかわかっているのか?」

「‥‥いえ、山崎さんに呼ばれただけなんで何も‥」

「少しは態度を改めろ。バカイザーだろうが私が此処の支配者ということに変わりはないのだぞ?」

ふふ、と高慢に嗤う。紛れもなく沖田さんのドSスマイルだ。惚れ惚れするくらい奇麗だが同時に悪寒がはしった。
途端、地べたに座るぼくの太股を彼の白く華奢げた足の親指が擦った。

「そう怯えるな。なに、罰と言っても痛くはない。貴様が私に忠僕するよう雄そのものを躾けてやるだけだ」

突っこむことすら、笑うことすら出来なかった。あまりにもぶっとびすぎた発言に思考がフリーズしそうになった。親指がだんだん局部に近づいていっているのにも驚いたが、それ以上に今の発言のほうにも驚きを隠せない。

「安心しろ受けた隊士は皆悦んで下僕を甘んじた。効果は実証済みだぞ?」

「いや、ぼくは遠慮します――‥‥え、実証済み?」

「勿論」

ふん、と偉そうに鼻を鳴らす。この人は隊士相手に何をしているんだ。元々の真撰組でも人気だったのだから、そんなことやり始めたら下心丸出しでわざと罰を受ける輩も居るだろうに。無料であんな美人に足コキしてもらえるなんて至福でしかない。そんなことがあったなんて、最早絶句だ。

「アンタしっかりして下さい!ていうか、何でぼくが‥‥――ッ?!」

「つべこべ言うな。――それともギロチンにするか?」

一瞬、想像したものが脳裏を過りゾッと神経を強張らせた。そんなぼくのことはお構い無しで、このバカはズボン越しにぼくの股間を遠慮なく刺激する。

そんなに楽しそうな顔で見ないでくださいよちょっと。ぼくはソッチの趣味は断じて無い。それでもこの人から目を離せないのは余りにも奇麗な錯覚のせいだろう。

「ちょ、ッ沖田さ‥‥!!」

「早いな。もう硬くなって来たんじゃないか?」

ぼくが足コキという拷問と言葉攻めを受けている最中、沖田さんは「だいたい、貴様が坂田将軍の有力な情報を話さないから、」などと漏らしていた。確かにぼくは、銀さんがヤムチャになったとしか話していない。でも本当にそれくらいしか知らなくて逆にこっちが教えてほしいくらいだった。

「いやぼくホントに知らないんです!」

「白々しいな。そんな適当な嘘で逃れなれると思うなよ」

形のよい唇が弧を描き、その上を舌が舐める。強く股間を刺激され(もはや踏まれているのに近い)、こんな艶っぽい表情されて、実のところ硬くなっているのは仰る通りである。恥ずかしながら早漏なものでパンツの中が湿っていて、このまま足コキで出すなら出してしまいたかった。焦らされているのか、ちょうど射精を催す程の快感はない。

揺らめき始めた欲と昂ぶりが交差したときには、ぼくは沖田さんの細い足首を掴んでいた。ぼくは興奮していた。まさにムラムラという擬音がふさわしいくらい。

「?‥‥何を、して」

ガチャガチャとベルトを緩める。この人はまだ理解出来てないようだった。ジーとファスナーを下ろす音が聞こえると、やっと身の危険を感じたらしい。後退しようとするから、ぼくは足首をぐい、と引く。軽いなあ、と考えながら(この時は自分でもびっくりするくらい力が入った)ズレてしまったバスローブから沖田さんの太ももの付け根あたりが丸見えだった。
――プッツン、と何かが切れた気がした。

「っひ」

引き寄せた反動で爪先だけでなく、足の平が思い切り局部に入る。これが引き金になった。

「っあ!‥す‥いません、い、イ」

「ッ‥‥!!」

イきます、と伝え終わる前にあっけなく出してしまった。久しぶりの射精で自分の隊服はともかく沖田さんの爪先、足首にも飛び散らかしていたのだ。目どころか顔さえ合わせようとしない彼に、はっと自分のしでかしたことに背徳を覚える。
どうしようどうしようと脳ミソをフル回転させていると

「気持ち悪いからはやく拭け。ただし隊服使ったら殺す」

「えっ‥‥ああ、はい」

思わぬ対応で声が裏返った。ポケットに入っていたハンカチで沖田さんの足を汚す自分の液を拭った。

「‥‥あの、ホントすいませんでした」

「ありがとうございましたとてもよかったです くらい言えないのか?私の身体を使わせてやったんだぞ。感謝の言葉の千や二千は当たり前だろうこれだから童貞は」

め、めちゃくちゃ通常運転じゃないかこの人!
なんかもっとこう、心底気持ち悪がられたり精神的ショックとかトラウマとかなってるかと焦ったのに。
まあでも殺されてないだけ十分だ。もともとは沖田さんのせいだけど、後半はホントに粗相をしてしまったと思う。銀さんじゃあるまいしぼくらしくない。

「これでお前の命は真撰組及び私に属するものとする。お前は私から受けたものの相応のを事を返上する義務がある。全細胞で忠誠せよ。科せられた任務は命徒して遂行しろ。全てに拒否権はない。返事はイエスのみだ」

拒絶が解かれ少し覇気のない瞳がぼくが答えを、肯定するよう首を縦に振るよう此方を見つめる。よく上司からの命令より、可愛い女の子のお願いのほうが百倍頷かせることが出来ると言うが、上司になるであるだろう女の子より可愛い彼からの命令はどちらに分類されるのだろうか。ぼくは考えるのも愚問だと思った。

どちらにせよこの人は、避けて通れないのだ。


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