よく晴れた気持ちのいい昼下りだが、平日のせいか公園にいる人は疎らだ。
暑くなく、心地よい寒さ。自分にとって気持ちのいい天気はあまりにも少ない。
だからこういう天気の日は外で過ごさないと損をする。


本来なら平日だから学校へ行かないといけないのだが、正直学校の授業は受けなくても困ったことがない。
頭の中が要領よく出来ていると言うか、学業で苦戦した覚えが一度もなく、テストの前に適当に流せば上位をキープ出来る。


ポケットに手を突っ込んだまま公園のベンチに倒れ込むように座り込んで、ぼんやりと空を眺めた。
薄い綿のような雲がゆっくりと流れて、冷たい風が身体を撫でていく。

あまりの気持ちよさにうつらうつらしかけていた時のことだった。何かが倒れるような大きな音がして視線だけをそちらに向けると、自動販売機に乗った奇妙な女を見つけた。


女は自分と同じくらいの歳らしいが、制服は見たことがない制服。スカートでゴミ箱伝いに自動販売機に登ったのか、踏み台にされたゴミ箱はひっくり返って無惨にも空き缶をぶちまけている。
カラカラ、と空き缶が風で転がるが女はたいして気にしていないようで手に持ったスケッチブックになにかを描いていた。
荒そうな手つきで何かを描いては首を傾げたりしゃがんだりしながら遠くを見るその姿は、変人にしか見えない。


そして下から見上げているせいか、スカートの中の色気のない短パンがばっちり見えている。
そんな女の視線の先にあるのは、随分と年期の入った古い民家だった。
既に誰も住んでおらず、草は生え放題でくたびれているその家は眺めるにはあまりにも貧相だと言える。


「おい」

「へ?はっ?」


何をしてるんだ、と声をかけようとした瞬間に狼狽えた女は自動販売機の上でグラグラとバランスを崩してスケッチブックを放り投げた。

宙を舞っていたスケッチブックがばさっと地面に落ちたのを確認してから、女を見る。
体勢を持ち直した女はこちらを訝しげに見下ろしていたが、どう見ても怪しいのは自動販売機乗った女の方だろう。


放り投げられたスケッチブックには荒い線で縁側の絵が描かれていた。

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