「ローさん!ローさん待ってくださいよ!」


設計図や資料を抱えてガサガサと小走りする名無しだが、なんの荷物も持たずに颯爽と歩いていくローにはなかなか追い付けない。
勤務年数は3年を過ぎて、タイル会社に勤めていた時よりも安定した生活を送れるようになった。

給与面はたいしてかわらないが、家賃を払わなくてよくなったのが一番の利点だろう。
告白らしきものは一切していないが、気が付いたら自宅の荷物がローの家に運ばれており、強制的に同棲と言う形になったのだ。

その分朝晩関係なくコキ使われるが、給与の3割を持っていっていた家賃が無くなると言うのはかなり助かっている。


相変わらずローは居丈高で意地悪でなにを考えているか分からないが、もはやそうでないと落ち着かない。

優しい男なら荷物を持ってくれるのだろうが、生憎そういう男には惚れそうにない。


「早くしろ。お前を待ってたら遅刻する」

「そんなこと言いますけどこんな嵩張る荷物持って早くは歩けませんよ!だから早起きしてくださいって言ったのに」


低血圧なローは朝起きるのが苦手らしく、起きるのに一時間ぐらいかかる。
しかもいきなり起こしたら機嫌が悪くなってしまい3時間は口を聞いてくれなくなるため、徐々に起こすことが必要になる。
カーテンを開け、窓を開け、それからがたがたと生活音を聞かせること1時間。やっとローの目が開く。


「無駄口叩いてないで足を動かせ」

「はいはい、わかりました」


本来ならキレてしまうところだが、ローと一緒にいること3年。もう完全に慣れっこで、ローに特に悪気はないことはもう知ってる。

今回のプレゼンだって、付き添いは認められていなかったのだが、勉強のためにとローが直談判してくれたのだ。
ローはそれを言葉にすることはないが、キッドやナミから色々な教えて貰っているからわかる。


「……隣でニヤニヤするな」

「はい」

「本当にわかってるのか?」


少しだけゆっくりになった歩調のおかげで隣に並んだ名無しの顔は随分と緩んでしまっていたらしく、ローが不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
慌てて顔を引き締めると、ローから呆れたような溜め息が漏れた。



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