先ず目指すのは二級建築士。
そうなると7年以上の勤務経験がいる。
その前にインテリアコーディネーターとインテリアプランナーの資格を取った方がいいとローに言われた。


ローとは学科も違っていたからスタートラインも当然違う。
才能もないかもしれないし、一発で受かるとは限らない。

それでもローの後を追い掛けたいと思うのは、強い憧れと、底知れない好意だろう。


「真面目に聞いてるのか?」

「き、聞いてます!すみません!」


仕事に時間ができると、ローは勉強を見てくれるようになった。その他にも設計したものを見せてくれたり、コンペなんかにも連れていってくれたりする。
勿論雑用としてだが、勉強になることが多いので苦痛ではない。


ジョーカーに逆らってからローには大きな仕事が回ってこなくなった。
あれだけやりたがっていた美術館の設計の話もなくなり、今は個人から受けた仕事に重点を置いてやっている。

企業はある程度圧力が聞くが、個人の場合はそう簡単には圧力はかけられない。
ネームバリューや安さで言えば勿論ジョーカーには勝てないが、それでもローに頼みたいという依頼主は絶えない。


「わかるひとにはわかるんですね」とローに言ったら「半人前が生意気なことを言うな」と怒られてデコピンされた。


「今回のコンペもジョーカーが来るんですか」

「来るだろうな、なんせ規模が規模だ」


ジョーカーに真っ向から喧嘩を売ったローは、未だに勝ち目のない勝負に挑み続けている。
周りは無駄なことだと言っているが、ローは勿論のこと名無しも無駄なことだとは思っていない。

ローがそうやって抵抗していることで、最近はローに賛同する会社も少しずつだが出てきている。


「ローさん、」


好きだとはまだ伝えていない。伝えていないが、多分伝わっているとは思う。
確信はないが、ローからも多少好意を感じる。

でも、まだ伝えるわけにはいかない。好きですとか、側にいたいとか、言うにはまだスタートラインにも立てていない気がして。



開きかけた口を閉じて目を伏せると、ローがぐしゃりと名無しの頭を撫でた。


「わかってる。もう待つのは慣れたからな」


そう勝ち気に笑ったローに名無しは短く息を吐き出して笑った。











もしカピバラになれたら


一噛みぐらいは出来そうな気が、する。



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