冗談だと思っていた焼きそばパンが本当に支給された。
しかも今回は冷えきったものではなく出来立てほかほかだ。

弾力のある柔らかいパンに挟まれた魅力的な焼きそばのソースの匂いが鼻の奥を擽って、何とも幸せな気分になる。食べるのが勿体ないと感じてしまうぐらいだ。

まさか焼きそばパンが支給されるとは思っていなかったのでお弁当を作ってきたが、そのお弁当はローの手の中にある。
こうなると予想出来ていればもう少しまともなおかずを入れたのに、いつも通り貧相なおかずしか入っていない。


「なんか、すみません……」


ブロッコリーをおかずにご飯を食べるローを見ていたら自然に謝罪の言葉が溢れた。
自分だけ美味しいパンを食べていて、雇い主はブロッコリーをおかずにしているなんて、申し訳なくて仕方ない。


「食えれば何でもいい」

「確かにローさんはそんな感じですよね」


見た目不健康そうなローはあまりバランスよく食事を摂っているようには見えない。
部屋のゴミ箱には固形タイプやゼリータイプの栄養補給剤などのゴミが大量に捨てられている。


まさか最初にこの事務所に来たときはこんな風に向き合ってご飯を食べることになるとは思わなかった。
無愛想な顔も見慣れてしまえばたいして気にはならない。寧ろ今となっては嬉しいぐらいだ。勿論そんなことは畏れ多くて口にはできないが。


「よかったら明日は真面目にお弁当作って来ましょうか?よかったらなんですけど…」


汚名返上と言うわけではないが、もう少しまともな弁当が作れると言うことをアピールしておきたい。


「気にするな。料理は出来なくてもあまり気にしない」


気を使って言ってくれたのだろうが、弁当の中身が美味しくなかったと言っているのと同じことだとはローは気がつかないのだろう。


「…なんか女としてのプライドが音を立てて砕けたような気がしました」

「弁当なんか作ってる暇があったら勉強してさっさと追い付いてこい」

「ごもっともです」


なんの色気もないもやしをもしゃもしゃと食べたローを見て敗北感に駆られた。やっぱり内緒で料理の勉強もしようと思う。












捕食者からのお気遣い


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