ざわざわと騒がしい会場内で相変わらずド派手な男を見つけて無意識に眉間にシワを寄せた。
いつもにこにこ笑っていられるタイプではないので険しい顔をしているが、今日は更に酷い顔をしているのだろう。


男の名前はドンキホーテ・ドフラミンゴ。先祖代々建設業に関わってきていて、且つ大地主。会社のジョーカーの名前は聞いたことがない人間がいないぐらい巨大な会社だ。
裏の方でも色々と怪しい噂を聞いたりはするが、実際事実かどうかは誰も口にすることはできない。建設業に関わる人間の間では暗黙の了解になっている。

いかなる黒い噂であろうが、疑うようなことを口にしてしまえば瞬きをするような早さで業界から干されてしまう。
そんな汚い会社だとわかりきっていたのにわざわざジョーカーに入社したのは、大きな仕事が回ってくる確率が多いからだ。
より多くの経験を積み、ドフラミンゴの目に敵うほどの実力を身に付けて、幹部の椅子を約束された。だがその話を蹴って独立。
そんな不義理をやってのけたのにも関わらず、今まで干されずにそこそこやってこれたのは、ドフラミンゴの裏工作等を見て見ぬフリをしてきたからだ。

盗作されようとも、デザイン画をめちゃくちゃにされようとも、勝手にコンペからリタイアさせられようとも、なにも口答えをせずに端の方でちまちまと仕事をしてきた。


企業が送り込んでくるやつは大抵ドフラミンゴに買収されるか脅されてスパイになる。
名無しも当たり前だがそうなるものだと思っていた。


弱者が生きていく為には仕方がないことで、それが悪いことだとは思わない。だから名無しの判断に任せる為にデザイン画を預けた。



それなのに今日はドフラミンゴに渡っていると思っていたデザイン画を持ってコンペに参加することになった。
名無しが何も言わずに辞めていった日、書斎に置いてあった。


「フッフッフッ、元気そうだなぁ、ロー。今回はてっきり不参加なのかと思ってたが…」


サングラス越しの鋭い目がこちらを捉えて、遠回しにリタイアを迫られる。


「ああ、もう逃げ回るのは止めにしたんだ。もう俺はアンタの部下じゃあねぇ」


立ち向かうことが馬鹿のすることだとわかっていても、くしゃくしゃになってしまった自分のデザイン画を見ていたら引くわけにはいかなくなった。
きっと今引いたら、名無しは軽蔑の目を向けるんだろう。ついでにあのチューリップ頭の馬鹿も。


「俺は自分の力でジョーカーを打ち負かす」











虎の背中を押す鼠



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