独創的なデザインをした事務所の前に颯爽と立ちはだかったナミは二回目になる訪問に奮起していた。

名無しが強制的に解雇されたことにより、トラファルガー・ローの仕事の担当枠が空いたので、必然的にナミがその枠に収まることになった。
男が後任になるよりも、女の方がいいだろうと上が考えた浅はかな考えからなのだろうが、あの天下のトラファルガー・ローがそんなショボいことで心を許すとは到底思えない。


「こんにちは。2時にお約束させていただいていたフーシャタイルの者です」


勢いよく事務所の扉を開けると、クールビズの言葉を忘れさせるほどの冷たい風が足元を通り抜けていった。
煌々と射し込む日差しや、飾り付けられた向日葵などが嘘のように見えるほど冷えきった事務所には、唯一似合うシロクマが相変わらず受付の机の上にちょこんと座り込んでいた。

以前来たときは季節を感じさせるような装飾は一切なかったはずだ。多分名無しが勝手に飾り付けたのだろう。
世話係りを失った向日葵は少し元気がなさそうに見えた。


「すみませーん!」


反応のない事務所に少し大きめの声を出すと、奥へと続く扉がゆっくり開いて至極迷惑そうな顔をしたローがナミの方を見てこれ見よがしにため息を吐いた。


「聞こえてる」


ぼそりと吐き出された言葉が以前来たときと全く同じだった。前回も思ったが、そこまで嫌そうな顔をしなくてもいいんじゃないかと思う。


「この度は弊社の名無しが大変ご迷惑をお掛け致しました」

頭を下げながらちらりとローの顔を盗み見すると、名無しの名前に少しだけ眉を歪めた。


「特になにもされてない、アンタの方がよく知ってるんじゃないのか」


目が合った瞬間、ローがふいっと顔を反らして扉を開けたまま奥へと入っていく。
名無しからの話では一方的にローを慕っている感じだったが、名無しの解雇を受けて契約の話を持ち出したところをみるとそうとも言い切れないような気がする。

なんだかんだで難しい話にしているのは本人達だけで、周りから見ればたいした問題ではなかったりするものだ。


「不器用なのよね」












不器用な二人



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