目が覚めたらもうお昼を過ぎていた。
暑いことは暑いが、ピークの時ほどはなく我慢できない暑さではない。

けたたましいほど鳴いていたセミ達もこの2週間でだいぶ淘汰されてしまったらしく、数が少なく感じる。

習慣的に付けたテレビからは聞きなれないコメンテーターの笑い声が聞こえて、そのテンションの高さに思わず眉を顰めた。

部屋の中に散乱した求人雑誌とビールの空き缶がより一層虚しさを駆り立てる。
就職支援センターにも行ってみようと思ったが、なんだか脱力してしまってそんな気にもなれない。

後回しにしてはいけないとわかっていながらも求人の文字から目を反らす。気まずくて反らした視線の先にあったのは少しだけ歪んだ真っ白な模型だった。

色もなにも着いていないのに、活気に溢れた様子が見えてくる。不思議な模型だ。
人がどんな風に流れて、どこで空気が抜けるのか容易に想像できる。きっと駅前の商業ビルもローが思い描いたように建っていれば今よりずっと良かったに違いない。


そしてまた求人雑誌に目を向けてため息を吐いた。
就職先の希望はやはり建築関係なのだが、ジョーカーの圧力が有る限り希望は見いだせないだろう。本当に馬鹿なことしてしまったと思う。


「……」


求人雑誌数冊に埋もれた雑誌を掘り出してペラペラと捲る。
でかでかと書かれたトラファルガーの文字と斬新かつ安らぎの文字。


「旅館かぁ…高いけど」


宿泊費に一通り目を通して一番近そうなページをぼんやり見つめること数分。
気が付くと携帯を握り締めて予約の為の電話番号を入力していた。


無職のくせに旅行に行くことにした。










現実逃れ





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