「おはようございますっ!」
少し家を出るのが遅れてしまったので小走りをした。
じわりと滲み出る汗を振り払うように事務所の裏口から駆け込むと、ローが少し驚いたような顔をしていた。
いつもよりも少し大きな声が出ていたということもあるかもしれない。
大企業ジョーカーのトップ、ドフラミンゴを目の前にきっぱり断ったからかもしれないが、なんだか気分がいい。
ドフラミンゴには凄い笑顔で必ず後悔することになると言われたが、今更後悔なんてすることはないだろう。
「今日はいつにも増して無駄に元気だな」
「そうですか?」
訝しげに眉を顰めたローだったが、すぐにどうでもよくなったのか呆れたような顔をした。
もうすぐ約束の2週間が終わる。
ほんの少しの地獄の生活で、ローの仕事に感情移入してしまったのかもしれない。
ローが大手であるジョーカーを打ち負かせるなら、無職になってもいいと思えている今の心境は自分でも不思議な感じがする。ナミに言ったら全力で拳骨されそうだ。
「ここに来て一番いい表情してるな」
「そこまでですか?なんかある意味ちょっとショックなんですけど」
「ああ」
少し投げやりに返された言葉は思ったよりも優しい声色で、一瞬心臓が跳ねた気がした。
最近ローが時折見せる油断した顔に弱くなってきている気がする。
ナミをも唸らせるほどのイケメンだ。緊張がなくなり、気を抜くとイケメンの顔に卒倒してしまいそうになる。
勿論本人にそんなことを感付かれたら嫌な顔をされるか、面倒そうな顔をされるかなので出来るだけ顔には出さないようにしているが、あまり自信はない。
「今日も頑張ろうっ」
誰もいなくなった本だらけの書斎で名無しは一人気合いを入れた。
冬眠までのカウントダウン
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