その日、目が覚めたのは日がだいぶ昇ってからだった。
カーテンから差し込む光が眩しくて、セミの声が煩い。


久しぶりの休みなのに、疲れが溜まりすぎていて何かをしようとする気にはなれない。
いつもなら色々としたいことがあって早起きしてしまうのだが、今はもう起きたくない気分だ。

暑いし眩しいしとてもじゃないが寝ていられない。散らかりっぱなしの部屋もそろそろ片付けなくてはいけないし、クリーニングにも行かなくてはいけない。
やることばかりが頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消え。どんどん憂鬱になっていく。



「……」


ナミは泥棒が入った部屋は怖いだろうから泊まり来いと言ってくれたが、正直全く怖くない。
相手の目的はわかっているし、一度泥棒に入られていればなにもないことぐらいわかるだろう。


じわじわと汗が滲み出てきて、日の当たっていた場所から熱を感じる。
相変わらず暑いのは暑いが、ピーク時ほどはなくなってきた気がする。無造作に付けたテレビからは水不足を心配するアナウンサーの声が聞こえた。


散らかった部屋の中で軽快に話をするアナウンサーの声を聞きながら少しシワが出来てしまった設計図を手に取る。
ケースに丸まって入っていたそれにはなんの迷いもなく描かれた夢の空間が広がっていた。

平面図のそれは頭の中で広がっていって、あっと言う間に頭の中は夢の空間に支配される。

ローの作った模型を何個も見たせいか、少しクセのある作りも抵抗なく想像できた。

昔からこんな風に設計図や間取り図を見て妄想することでストレスを発散する。学生のころに変人扱いされたから他人には絶対に言えないが。


「そうだ、駅前の商業ビルに行こう」


独自のデザインを見ていたらふ、と駅前の商業ビルと似た部分を見つけて、無性に見に行きたくなった。
たいして使わないデジカメを鞄の中に突っ込んで、大急ぎで支度をする。今日は国民の休日だ。きっとあり得ないほど混雑しているのだろうがたまには人混みに揉まれるのもわるくはない。


ぼさぼさの髪の毛に櫛を通しながら、ジョーカーの言葉を思い出したが面倒だったので鼻唄で頭の隅に追いやってやった。

ニュースでは午後からは雨が降る、とお天気お姉さんが言っていた。








なんてことない休日




back

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -