早く寝たせいか、夜中に目が覚めた。いや、不穏な空気を感じ取ったからなのかもしれない。

いつもと違う部屋の空気に名無しは重たい瞼をごしごしと手で擦った。ぼんやりとした暗闇の中で皮膚は擦ると劣化するという美容知識を思い出したが、擦ってしまった後だったし、明日からは気を付けることにして今日は諦めて思う存分擦ることにした。


目が暗闇に慣れないこともあり、暫くぼんやりとしていたが部屋の中に違和感を感じで汚い部屋の中を見渡した。
ここ最近ずっと忙しかったからか、部屋の中があり得ないぐらい汚い。あり得ないぐらい汚いのはもともとなのだが、それだけではないような違和感を感じる。


引っ張り出されたままの引き出しだとか、片っ端から掘り返されたような部屋の中は尋常ではない散らかりようだ。
それに気がつくのにだいたい10分ぐらいはかかったと思う。
疲れが溜まっていたせいか、自分の部屋なのに何故か他人のような感覚で見ていた。


「これは、……あれか。空き巣?いや空き巣は留守のときに忍び込まれることだったっけな」


暗い部屋で一人静かに呟くと、侵入を許したであろう鍵の開いた窓から生ぬるい風が吹き込んできた。
外からは室外機のファンの回る音が聞こえてくる。


身体に鞄ごと踏み潰されていた設計図は、哀れな姿になってはいたが無事だったようだ。


「……」


ごそごそと潰れた鞄を漁り、携帯を取り出す。
時間は深夜2時。頭が起きないわけだ。

眩しい程の光を溢す携帯に目を細めながら履歴に目を通し、キッドの名前で通話ボタンを押した。
何故警察ではなくキッドに電話をしたのか、自分でもよくわからない。たぶん寝ぼけていたからだろう。

当然のことだが、キッドに電話をしたら怒鳴られて警察に電話をしろと言われた。



踏んだり蹴ったり過ぎていくらポジティブに考えても、もう立ち直れる気がしない。







桃鳥の前の鼠の昼寝



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