04
サッチになにかお礼をしようと思ったが、なにがいいのかがわからない。
天津飯と資料のお礼だが、サッチが何を好むのかが全くわからないのだ。
女の子ならスイーツとか、ハンカチとか色々あるが、いかんせん名無しは男の人にものを贈ったことがない。
よりによってサッチに最初を捧げるのは癪だが致し方ない。
とは、思うが、やはり何を返せばいいかわからない。
ネクタイは趣味がわからないし、ハンカチと言うのもなんだかピンと来ない。
だいたいサッチがハンカチを持っているのを見たことがないし、そんなガラじゃない気がする。
悩みに悩んで、バラエティショップで携帯灰皿を買ってしまった。
本当ならデパートで買いたかったが、残業したせいでもう閉まっていた。
携帯灰皿だけだと微妙だと思ったので煙草も買ってみたが、たまたま銘柄を知っていてよかった。まさか煙草がこんなにも種類があるとは。
お礼の袋を足元に置いてパソコンの電源を付ける。
寝不足で頭は痛いが、サッチから貰った資料のおかげで今なら進みそうな気がした。
さっさと進めてしまおうと資料を鞄から取り出して、パソコンに向かった丁度その時、いつもは時間ギリギリにしか来ないサッチが相変わらず面倒そうに椅子に座る。
「おはよー名無しちゃん」
「おはようございます」
丁度良かった、今ならまだ誰もいないし借りを返すには絶好のチャンスだ。
足元に置いた袋をサッチの方に突き出すと、サッチは軽く首を傾げた。
「なに?」
「差し入れと資料のお返しです。特に他意はありません、受け取って下さい」
「んあー…マルコバラしたのかよ、口軽いなーアイツ」
指で紙袋を引っ掛けて名無しの手から受け取ったサッチは中を見てへらりと笑う。
「煙草嫌いな名無しちゃんがよくわかったな、俺の煙草の銘柄」
「別に煙草嫌いじゃないですよ、吸わないですけど」
ヘヴィスモーカーな名無しの両親のおかげで、耐性が出来てしまったのか別に煙草の臭いには抵抗はない。
「えー…俺には煙草吸う人は嫌いですって言ってただろ?」
「……そうでしたかね」
それは多分煙草云々ではなく、サッチが嫌いだったからそう言ったんじゃないかと思う。
覚えてないが。
色々聞かれてウザくなったからそう答えたような気がしないでもない。
「なんだ、名無しちゃんが煙草嫌いじゃないならやめなかったのにな」
「……やめてたんですか、なんか役に立たないものあげてすみません」
「ん?もう2ヶ月ぐらいやめてるけど、気がつかなかったんだ?さすが名無しちゃん。俺に全く興味なし!」
そりゃ嫌いなヤツに興味なんかない。
そう言えば前は吸殻が山になるほど積んであってよく同じ部署の女の子に怒られていた気がするが最近は見てなかった。
普段は吸わないらしいが机に向かうと煙草が欠かせなくなるタイプだったらしい。
仕事しているところなんか見たことないので、仕方がない。