02
視線を感じ取ったマルコは静かに手を離すと、痛かったのか手をブラブラとさせている。
「風邪引くぞい」
「んー…大丈夫」
サッチの家では暖房ガンガンでコタツに丸くなっていたのにも関わらず寒い寒いと文句を言っていた名無しからは考えられない言葉だ。
と言うか普通の感覚があれば、この気温は寒い。
厚着が苦手なマルコですらマフラーをつけているぐらいだ。
「行くとこあるのかよい」
放って置けばいい、そうは思うが何となく放って置けない。
サッチも知らないと言うし、心配するんじゃないかとか余計なことばかり考える。
「とりあえず寝るとこを探しに行く」
引きずっていた段ボールを見る名無しに顔が引き釣る。
まさかまさかのホームレスになろうとしているらしい。
薄着で段ボール被ろうがこの寒さでは凍死確実だ。
「‥うちに来いよい」
「え、サッチの友もいい人」
名無しには遠慮とか警戒とかはないらしい。
無気力な顔でやったーと呟く名無しを連れて家に帰ることになった。
そう言えばサッチも名無しの寄生先が無くなったのを拾ったと言っていたのを思い出す。
公園に寝ていた名無しを拾ったと。
「なんか好き嫌いあんのかよい」
「熱いものとか嫌い」
「食べる物で、だよい」
見当外れな答えにため息を吐いて、後ろをついてくる名無しを見ると段ボールをまだ引きずってきていた。
それをマンションのごみ置き場に置かせて、オートロックのマンションに入っていく。
ロビーに入った途端名無しがここなら寝れそうだとまた物騒なことを言ってたが、なんだか疲れてなにも言い返す気力がなかった。
「サッチの友、金持ちだね」
「マルコだよい」
「え?何が?」
「名前が」
「ああ、うん」
何も言わなければ名前すら聞かない気がしたので、とりあえず名乗ったが名無しは軽く頷いただけで大して気にした様子もない。
普通なら名前を自分から聞くだろうと思うが、名無しなので仕方がないと諦めた。