寄生先探しています。
サッチの家に住むニート(本人は自宅警備員だと言う)名無しは高校の時の後輩だった。
現在の寄生先であるサッチの家で会ってから数回家を訪ねたが、やはり毎回のごとくコタツで丸まっていて、改めてニートと言う存在が理解できないと実感した。
それなのに、名無しらしき人物が目の前にいるのは何故なんだろう。
目の前にいる名無しは何回も会ってるのにも関わらず何の反応もなく、マルコの隣を抜けて通りすぎようとした。
氷点下にもなるこの時期に上着も羽織らず、便所スリッパを履いて。
かなりの薄着なのにやはり表情は眠たそうなままだ。
「おいっ」
慌てて振り向いて、名無しの手を掴むと氷のように冷たい指がぴくりと動いて、顔をこちらに向けた。
「えー…と、ああ、…サッチの友」
何度顔を合わせたかわからないのに、名無しは名前どころか顔を思い出すのだけでも一苦労だったようだ。
暫くマルコの顔を見てから思い出したかのように面倒そうに口を開いた。
「…お前、何でこんなところにいるんだよい」
サッチの家からはだいぶ離れたその場所はマルコの家付近で、顔をしかめる。
「んー…まぁまぁ、色々ありまして」
名無しは言葉を濁した。
濁したと言うよりは性格的に説明が面倒だったのだろうとマルコは解釈する。
「帰るなら道違うよい」
「いや、帰らない」
すっぱりと言い切った名無しは何処か目的地を目指しているようには見えない。
外出するにはあまりにも軽装すぎる。
「ケンカでもしたかい」
「いやー…サッチはいい人なのでしない」
確かにサッチは友人の自分から見ても喧嘩なんて一番遠い存在で、名無しが変わっていないのであれば名無しも喧嘩なんかする気力はない筈だ。
「どこ行くんだい、サッチは知ってんのかよい」
「わからないし知らない」
面倒そうに言う名無しは白い息を吐きながらマルコの握る手を見た。
早く離してくれないか、と言わんばかりの顔で。