05







取り皿、箸、お玉とそれを置くための小皿、全てサッチが用意する。

客のマルコは仕方ないにせよ、名無しはそれをぼんやりと待っていた。



「鍋なんて久しぶりだよい」


「ホントは煮込みうどん予定だったんだけどお前が来たから急遽変更」


「私うどんがよかった」


「……」


「そうかよ」



作ってもらってこの台詞はなんだ、とマルコがサッチを見るが毎回のことなので気にしない。

ぐつぐつと気泡を吹き出す鍋から名無し用に取り分ける。
猫舌な名無しはそれをじっと待っていた。


マルコは熱さに強いから普通にそのまま食べて、ビールを飲む。
そこで気がついたのか、がさがさとコンビニの袋からだしたビールをサッチの前に置く。



「おー、サンキュー」


「名無しもいるとは思わなかったからあんまり買ってきてねぇよい」


「後から買い出しに行くか」



名無しはふーふー、とサッチが取り分けたものに息を吹き掛けていたが疲れたらしく、挫折。
テレビを見ていた。



「今日泊めろよい」


「俺んち狭いのに…お前自分の広い家に帰れよ」


「てか勝手に泊まるよい」


「コタツで寝ろよ」


「よい」



鍋を突っつきながら、二人で会話するが名無しは空気のように気配を消している。



「名無し、もう冷めただろ…とっとと食え」


「箸持つのダルい…」


「……」



マルコの箸が止まる。




「ほら、口開けろ」



ため息を吐いてから、白菜を箸で掴み上げたサッチは口だけ開ける名無しの口に放り込む。

もぐもぐと噛むその姿はなんとも気だるげで見てるこっちまで眠たくなってくる。



「お前ら…いつもそんな感じなのかよい…」


「んあー‥いや自分で食べるときもあるけど…放っとくとコイツ食わねぇから」



名無しの口に豆腐を突き付けると、面倒そうに口を開ける。




「付き合って…」

「ねぇよ、ただの同居人」


「及び寄生虫です」



マルコは理解できない、と顔を手で覆って二人から目を反らした。


確かに客観的に見れば変な関係な気はする。
ニートを養って、飯を食わせて、なんとも言えない寄生されている宿り主だが、特別この生活は嫌いじゃない。



「…お前、まさかコイツのせいで最近付き合い悪かったのかよい」


「だってコイツ一人にするとなんもしねぇから」


「…付き合ってんのかよい」


「だから…付き合ってねぇって、ただの同居人」























ものぐさな同居人



「い、一緒に寝んのかよい」


「ん?ああ…」


「サッチ暖かいよ」


「……‥」



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